2013年05月25日

除草剤の藻類影響と藻類エネルギー


先の記事で紹介した藻類のハイスループット試験の論文ですが、
電子版ではすでに公開されています。
Nagai Takashi, Taya Kiyoshi, Annoh Hirochica, Ishihara Satoru (2013)
Application of a fluorometric microplate algal toxicity assays for riverine periphytic algal species.
Ecotoxicology and Environmental Safety, in press
http://dx.doi.org/10.1016/j.ecoenv.2013.04.020

この方法で各種藻類に対する除草剤の影響を現在調べているところですが、
ふと気になって、最近話題の藻類エネルギーのことを調べてみました。


藻類エネルギーと言えば、
もともと藻類学が強かった我が筑波大が今や聖地のようになっています。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/index.html
(私が藻類好きなのもこのおかげです)

私が大学時代に住んでいた平砂宿舎1号棟の
すぐ目の前にあった平砂プールが
いまや大規模藻類培養実験施設に変わっているのはとても感慨深いです。
(当時すでにプールとしては使われておらず、
いつも魚を捕って遊んでいた)



オイル産生藻類のボトリオコッカス(緑藻)と
オーランチオキトリウム(ラビリンチュラ類)を用いて、
開放系大規模生産実証試験として、
つくば市内の耕作放棄地を活用した屋外大量培養の研究開発に着手します、
と研究計画にはあります。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/02project/index.html

開放系での培養となると、いろんな藻類あるいは雑草が繁殖しますので、
それを抑えるために除草剤の使用が不可欠となるでしょう。
ここが一番の私の気になるところでした。

上記と同じ渡邉・彼谷研究室のサイトを見ていくと、、、
-----
改良品種の開発
除草剤耐性の突然変異株の作成に成功しました。
この成果とボトリオコッカスが強い抗生物質耐性をもつことが判明したことにより、異種混入を制御することが可能となり、開放系での大量生産技術開発への道を大きく拓きました。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/02project/index_02.html
-----

とありました。
なるほど、遺伝子組み換え作物でよく使われる考え方ですね。
(変異体だから定義上遺伝子組み換えではないのでしょう)

論文はたぶん↓だと思います。
Ioki, M, Ohkoshi, M, Nakajima, N and Watanabe, M (2012) Isolation of herbicide-resistant mutants of Botryococcus braunii. Bioresource Technology 109, 300-303
http://dx.doi.org/10.1016/j.biortech.2011.07.101

パラコートとグルホシネートに耐性を持つ変異体を開発したとあります。
なんでこの二剤なんだろう???
と思いましたが、おそらく代表的な非選択性除草剤ということで選んだのでしょう。

ただし、これらの剤は残念ながら藻類にはあまり毒性が強くないので、
これらを使用するとなると、
とんでもない量をまかないと効き目が出ないと思われます。

実際に論文中の実験では
パラコートを13mg/L、グルホシネートを100g/Lも入れています。
こんなのを使って休耕田で野外培養なんてやったら大変なことになりそう
というのが正直な感想です。
ちなみに水田で使用する除草剤の田面水中濃度は最大でも1mg/L程度です。
新規技術に伴うリスクとして考える必要が出てくるでしょう。


各種藻類に対する除草剤の影響を調べているところなので、
こういう用途に使うならもっと適した剤がいくつもあるのにな、
と思ってしまいます。

つづく。。。かも
posted by shimana7 at 22:53| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月10日

新規論文


新しい論文が受理されました:
Nagai Takashi, Taya Kiyoshi, Annoh Hirochica, Ishihara Satoru (2013)
Application of a fluorometric microplate algal toxicity assays for riverine periphytic algal species.
Ecotoxicology and Environmental Safety, in press

2011年ころから始めたハイスループットな藻類毒性試験法の開発です。
日本の河川で優占する付着藻類の中から代表種を5種選択し、
その5種類の藻類の毒性試験を同時に行うことができます。

これを使うと、たった一度の試験で、
種の感受性分布解析まで可能な量のデータが取得できてしまいます。

この論文はとりあえず試験法の部分のみを書いたものですが、
現在この方法ですでに大量の毒性データを得ることができています。

既存のデータを使ってできる解析は大体やりつくしてしまった感があり、
大量にデータを取得できるようになるとまた新たな世界が開けます。
(ネタバレになるのであまり書けませんが。。。)

非常に便利な試験法なので、
日本語の試験法マニュアルを作って、
今年度中に公開することを予定しています。
試験法だけではなく、試験データの統計解析方法の部分も充実させたいな、
と思っているところです。

posted by shimana7 at 21:54| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月19日

講演:解決志向リスク評価


講演の宣伝です。
日本リスク研究学会のシンポジウム(@東大)で講演を行います。


http://www.sra-japan.jp/cms/modules/piCal/index.php?smode=Daily&action=View&event_id=0000000057&caldate=2013-4-19
-----
日本リスク研究学会 第26回シンポジウム
《食品安全のためのリスク分析のこれまでとこれから》

日時:2013年6月14日(金)
 第一部 14:00〜17:00
 第二部 17:20〜19:20(予定)
会場:東京大学山上会館
参加費:
 第一部 シンポジウム 会員・協賛会員及び学生 2,000 円、一般 3,000 円
 第二部 意見交換会 会員・協賛会員及び学生 3,000 円、一般 4,000 円 (立食代を含む)
主催:一般社団法人 日本リスク研究学会

開催趣旨:BSE問題をきっかけに食品安全委員会が設立され、リスク評価とリスク管理を機能的・組織的に分離する形でリスク分析が導入されてから今年でちょうど10年になります。最近では東日本大震災後に生じた食品中の放射性物質の問題においてもリスク評価は注目を集めました。本シンポジウムは、食品安全を題材に、様々な切り口から、リスク分析が食品安全分野においてうまく機能してきたかどうかを振り返り、リスク分析が社会の安全のためにさらに貢献できるように、これからのあるべき姿を探っていきたいと考えています。

第一部 プログラム

松尾真紀子氏(東京大学政策ビジョン研究センター研究員)
「日本の食品安全行政ガバナンスの制度変容と今後の課題」

広瀬 明彦氏(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター総合評価研究室 室長)
「食品等に含まれる化学物質のリスク評価の経験とそこから見えてきた課題」

山崎洋氏(関西学院大学名誉教授、元IARC研究部長)
「発がん性評価のありかたーIARCの経験をもとに」

永井 孝志氏 (独立行政法人 農業環境技術研究所 研究員)
「リスク評価とリスク管理の位置づけを再構成する解決志向リスク評価」


総合討論

司会・進行: 岸本充生((独)産業技術総合研究所 安全科学研究部門 研究グループ長)
-----


タイトルにある解決志向リスク評価とは、
Solution-Focused Risk Assessmentの訳です。

Solution-Focused Risk Assessmentについては
以前の記事でも紹介しました。
http://shimana7.seesaa.net/article/301037999.html


私の研究テーマ(農薬の生態リスク評価)とは少し離れます。
ただ、私はもともと基準値の設定プロセスに強い興味を持っています。

リスク評価はADIやTDIなどの線引きする。
リスク管理は基準値を決めてそれ以下になるように管理する
(基準値を超えた超えないで一喜一憂する)
というやり方へのアンチテーゼとして解決志向リスク評価があります。

いろんな事例をもとにこの考え方の極意を
紹介できればいいなと思っています。
posted by shimana7 at 21:15| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月12日

リスク評価と管理の分離についてのメモ


さて、現在の食品安全に関する日本のリスク評価と管理については、
リスク評価機関がが食品安全委員会
リスク管理機関が農水省と厚労省となっており、
このトロイカ体制によって
リスク評価とリスク管理が機能的にも組織的にも分かれた形となっています。

リスク評価と管理の分離については、
Red Bookと呼ばれる1983年のNRCによる報告書に
良く記載されています。



ところで、
農水省が行っているリスク管理検討会というものがあります。
http://www.maff.go.jp/j/study/risk_kanri/about.html


平成17年度の第二回会議の概要
http://www.maff.go.jp/j/study/risk_kanri/pdf/summary_6.pdf
から、

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Codexおけるリスク評価とは、独立した機関による評価であると紹介されたが、リスク管理機関の一部によるリスク評価というのは否定されるのか。⇒Codexの「リスク分析の作業原則」と「リスク評価の役割」という2つの文書において、リスク評価機関とリスク管理機関には、機能的な分離(functional separation)を求めている。また、リスク管理機関とリスク評価機関のコミュニケーション(interaction;相互作用)を併せて求めている。海外の例をあげると、アメリカでは試行錯誤の結果として、リスク管理機関の中にリスク評価を行う組織があるが、機能的には分離。ヨーロッパでは組織から分けているところがあり、例えば、ドイツでは、同じ組織でリスク管理とリスク評価を行っていたものを2つの組織に分離。あくまでもCodexが言っているのは、機能的な分離と相互作用についてであり、様々な形態がある。
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ふむふむ、
米国EPAでは評価と管理を両方行いますし、
機能の分離と組織の分離は別物だということですね。

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ノルウェーでは、評価機関と管理機関の組織を分離し、最終的な責任の所在が曖昧になって失敗したと言われている。日本もリスク評価機関とリスク管理機関に組織を分離したことがいいのかどうかについて、今後評価する必要がある。
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え、ええーっ!?

いまさらですが、そういう話は初耳でした。
この意見、超重要な意見だと思うのですが、
この意見に対しては特に返答が示されておらず、
その後の会議でもこの話題が取り上げられることはありませんでした。
このノルウェーの失敗事例についての詳細が知りたいです。

まあ組織の話は農水省単独でできることではありませんけど、
では一体、トロイカ体制の問題を議論できるのはどこなのだろう??
と疑問に思ってしまいます。

これが平成18年の話ですから、
3.11を経てこの組織の分離の問題は再燃してもおかしくないはずですね。


posted by shimana7 at 10:36| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月02日

カゲロウが死んで何が悪い?


水生生物保全に係る水質環境基準については
亜鉛とノニルフェノールに加えて、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸が追加になるようです。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16182

最初にできた亜鉛の環境基準はもう10年も前になりますが、
いまさらまた追っかけ始めています。
基準値オタクの一員としては、
基準値をめぐるエピソードやドラマってやっぱり面白いなと思うところです。

基準値の科学的な解説自体も重要ですけど、
その裏側にある社会的なあれこれは
科学のみで語ることのできない「線引きの本質」をえぐりだすような気もするところです。


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朝日新聞2003年6月26日
水中の亜鉛規準 産業界から反発 答申見送り 「カゲロウが死んで何が悪い」
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ugoki/ugoki_03/ugoki_03_06.html

 魚介類やプランクトンなど水中の生態系を守るため亜鉛の環境基準の設定を検討している中央環鏡審議会水環境部会で25日、産業界出身の臨時委員が設定に反対し、同日に予定されていた答申が見送られた。
 専門委員会がまとめた基準は河川が1リットルあたり30マイクログラム(マイクロは100万分の1)、海が同10〜20マイクログラム。イワナやヒラタカゲロウの個体数が減少した実験結果を参考に決めた。部会では、産業界出身の委員が経済に悪影響があるとして反対。委員の一人が「ヒラタカゲロウが死んで何が悪い」と発言したことから議論が紛糾した。
------

「カゲロウが死んで何が悪い」
というのは(飲み屋ならともかく)審議会という場にあってはかなり衝撃的な発言ですよね。
でもこれ本当に言ったのかどうかが気になります。

この会議の議事録は環境省から公開されています:
中央環境審議会水環境部会(第8回)議事録
http://www.env.go.jp/council/09water/y090-08a.html

この中には「カゲロウが死んで何が悪い?」という言葉、
もしくはそれに類似する表現は出てきません。

実際には言っていたけど議事録には残らなかったのか、
それとも新聞記事での表現が誇張されたものだったのかはわかりません。
とても気になるところです。
posted by shimana7 at 22:18| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月25日

Toxicokinetic model


藻類の個体群動態モデルにトキシコキネティクスを導入したモデル
についての論文がHuman and Ecological Risk Assessment誌に受理されました。

Nagai Takashi (2013)
Algal population growth model integrated with toxicokinetics for ecogical risk assessment under time-varying pesticide exposure.

トキシコキネティクスを導入するというのは、
毒性が水中の濃度に依存するのではなく、
水中から体内に取り込まれ、体内にある農薬のターゲットサイトに運ばれ、
そこでの濃度に依存して毒性をもたらす、
というメカニズムをモデル化することです。
毒性の経時変化を予測する際に有効になります。

私は以前にアオコの研究をしていた際に
鉄の取り込み速度を考慮した藻類の個体群動態モデルを
作っていますので、それの毒性版ともいえます:
Nagai Takashi, Imai Akio, Matsushige Kazuo, Fukushima Takehiko (2007)
Growth characteristics and growth modeling of Microcystis aeruginosa and Planktothrix agardhii under iron limitation.
Limnology, 8(3), 261-270


河川水中の農薬の濃度は農薬使用の時期に依存して大きく変動するため、
そのような状況下での個体群の影響と
その後の回復性を予測できるモデルになっています。

生態リスクのエンドポイントとして、EC50がよく使われますが、
同じEC50に相当する曝露が、
農薬によって異なる個体群レベルの影響をもたらす
(回復できるかどうか、回復にどのくらい時間がかかるか)
ことを、シミュレーションによって示すことができました。


ところで、
今回のモデルはDEBコミュニティな人たちに散々叩かれまして、
自分としては少し不本意な形にモデルを修正せざるをえませんでした。
(結果としてはほとんど変わらないのですが)

私は既存の毒性試験の濃度反応関係をうまく使って
フィッティングで求めるパラメータ数をなるべく減らしたいのですが、
どうしてもモデルの全パラメータを同時にフィッティングで求めないと
この人たちにとっては「modeling practice」がダメなのだそうです。

このやり方は「modeling practice」としては美しいやり方ですが、
実用的にはいまいちなモデルになってしまうと思います。
(パラメータの持つ意味がわからなくなって、
メカニズムベースのモデルと呼べなくなってしまう)

化学物質の生態リスクの分野で個体群モデルが
なぜ実用化されないのかは、
個体群モデルな人たちの閉鎖性にあるのではないか
という気さえしてしまいました。


自分としては、もうこのテーマでの研究は方向性を変えて、
ハイスループットアッセイでモデルパラメータを効率よく決定できるような
そんな研究に今後はしていきたいと思っています。
posted by shimana7 at 23:34| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月23日

農薬学会2013まとめ


日本農薬学会第38回大会@筑波大学では、
自分が関係する発表として以下の4題がありました。

1. ○永井孝志、安納弘親
藻類生長阻害試験の統計解析方法:RExcelで行う非線形回帰分析

2. ○堀尾剛、稲生圭哉、岩ア亘典、横山淳史、永井孝志、依田育子
茨城県桜川流域における水稲用農薬の挙動 -本流および支流における水中濃度の比較-

3. ○矢吹芳教、相子伸之、永井孝志、稲生圭哉
パッシブサンプラーを用いた河川農薬モニタリングへの適用の検討

4. ○谷地俊二、永井孝志、岩崎亘典、稲生圭哉、横山淳史
農薬普及率の推計値を用いた地域性と経年変化の評価



1. の発表では、
・現在広く行われている毒性試験の統計解析はなぜダメか?
・ではどんな解析をどうやってやれば良いのか?
を話しました。

・NOECの欠点やら、EC10を計算する場合のProbit変換の問題点などの解説
・RExcelを用いた濃度反応関係の解析方法
を説明して、
実際の毒性試験データを用いて計算し、従来法の結果と比較を行いました。
NOECは0.3-17%の影響レベル(EC0.3〜EC17)に相当する結果となりました。


2. の発表では
河川水中農薬モニタリングの結果を報告しました。

質疑の時間に、モニタリングのデータを出すときは、
濃度だけじゃなくてそれが生物にどのくらいの影響があるのかを
同時に出すことが重要、とのコメントがありました。

ぱっと思いつくのが基準値との比較があって、
「基準値以下だから大丈夫です」
という言い方はとても簡単です。
ただしこれは諸刃の剣。
簡単で説明しやすいのですが、リスクを二分法に持っていく弊害があり、
まるで基準値以上なら危険かのような印象を与えるので
後々自分の首を絞めることになってしまいます。

モニタリングデータを有効活用するような
リスクの定量評価ツールを早く出さなければと思います。


3. の発表では
2.と同じく河川水中農薬のモニタリングなのですが、
水中に沈めておくタイプのパッシブサンプラーを用いた点が新しいです。
金属ではDGTの使用が徐々に広がりつつありますが、
農薬での水中パッシブサンプリングは
日本での活用事例はたぶん初めての報告かもしれません。
(SETACではそれだけでセッションができるほど盛り上がってます)


4. の発表では、
農薬が、いつ、何が、どこで、何に、どれくらい使われているのかの
データベースをまとめて解析した例を発表しました。

「いつ」は現在からとりあえず20年さかのぼれます。
「何が」は各種殺虫剤、
「どこで」は各都道府県レベル、
「何に」は主に水田での散布や育苗箱施用をメインターゲットとし、
「どのくらい」は水田の何%でそれが使われているかの普及率で表現しました。

ある程度簡便に、そして網羅的に解析できる手法になっています。

posted by shimana7 at 22:34| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月21日

EPAの試験ガイドライン改訂


先週は農薬学会@筑波大学でした。
自分の発表についてはまた後日まとめてみたいと思っています。

ところで学会の中で知ったのですが、
米国EPAの化学物質の試験ガイドラインが去年改訂されていたようです。
以前はOPPTSのガイドラインといっていたものが、
OCSPP: Office of Chemical Safety and Pollution Prevention
のガイドライン、に変わったようです。

生態影響関係は
Series 850 - Ecological Effects Test Guidelines
http://www.epa.gov/ocspp/pubs/frs/publications/Test_Guidelines/series850.htm
にあります。



藻類の試験ガイドラインは真核藻類(緑藻と珪藻)のものと
シアノバクテリアのものに分かれました。

850.4500 - Algal Toxicity (June 2012)
Document ID: EPA-HQ-OPPT-2009-0154-0003

850.4550 - Cyanobacteria (Anabaena flos-aquae) Toxicity (June 2012)
Document ID: EPA-HQ-OPPT-2009-0154-0004

試験条件などの違いによるものだと思いますが、
OECDテストガイドライン201では、
一つのガイドラインでこれらをカバーできているので
わざわざ分ける意味があるのかなあ?とは思います。
(実際文章は両者でほとんど同じです。)


EC50のほかに、NOECも計算するようになっていますが、
NOECの代替としてはEC5を計算するようになっています。
結構厳しい値になりそうですね。
(物質によってはほかのECxを使うこともあるみたいですが・・・)

ガイドライン中の表現ではEC50, EC5ではなく、IC50, IC05となっており、
ミジンコなどの影響のエンドポイント(ECx)に対して、
藻類の増殖速度の場合はICxと表現するように変えています。
このような用語の転換の意味として、
おそらくこれらのエンドポイントは明確に違うことを強調したいのだと思います。



ウキクサの試験ガイドラインでは、
従来の試験期間14日が7日に短縮され、
OECDガイドラインと同じになりました。
14日と7日では結果に大きな違いはないようです。

850.4400 - Aquatic Plant Toxicity Test Using Lemna spp. (June 2012)
Docket ID: EPA-HQ-OPPT-2009-0154-0027

posted by shimana7 at 23:30| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月18日

Rで濃度反応関係 〜drcパッケージ編〜


今回も統計の話です。

以前書いた記事
Rで濃度反応関係
http://shimana7.seesaa.net/article/172116752.html

Rで濃度反応関係 〜MCMC版〜
http://shimana7.seesaa.net/article/267132804.html
に、EC50等の計算方法を求めて検索して来られる方が多いので、
またもや懲りずに書いて見ます。

今回使用するのはdrcパッケージです。
これもとても簡単に使えます。
ただし、Rにデフォルトでは入っていませんので、
追加でインストールする必要があります。

drcパッケージについて:
drc: Analysis of dose-response curves
http://cran.r-project.org/web/packages/drc/index.html

drcの作者による論文:
Christian Ritz (2010)
TOWARD A UNIFIED APPROACH TO DOSE-RESPONSE MODELING IN ECOTOXICOLOGY
Environmental Toxicology and Chemistry, 29, 220-229



以下は計算過程です:

Rでdrcパッケージを読み込みます。
-----
> library(drc)
要求されたパッケージ alr3 をロード中です
要求されたパッケージ car をロード中です
要求されたパッケージ MASS をロード中です
要求されたパッケージ nnet をロード中です

次のパッケージを付け加えます: '‘alr3’'

The following object(s) are masked from ‘package:MASS’:

forbes

要求されたパッケージ gtools をロード中です

次のパッケージを付け加えます: '‘gtools’'

The following object(s) are masked from ‘package:car’:

logit

要求されたパッケージ lattice をロード中です
要求されたパッケージ magic をロード中です
要求されたパッケージ abind をロード中です
要求されたパッケージ nlme をロード中です
要求されたパッケージ plotrix をロード中です
要求されたパッケージ stats4 をロード中です

'drc' has been loaded.

Please cite R and 'drc' if used for a publication,
for references type 'citation()' and 'citation('drc')'.


次のパッケージを付け加えます: '‘drc’'

The following object(s) are masked from ‘package:stats’:

getInitial

警告メッセージ:
1: パッケージ '‘drc’' はバージョン 2.15.2 の R の下で造られました
2: パッケージ '‘magic’' はバージョン 2.15.2 の R の下で造られました
-----
Rのバージョンが古いので警告を受けましたがそのまま続けます。

使用する濃度反応関係のデータはまた同じです。
-----
> ###データ整理###
> res <- c(0.963, 0.925, 0.736, 0.300, 0.174, 0.062)
> conc <- c(30, 60, 120, 240, 480, 960)
>
> Obs <- data.frame(x=conc, y=res)
> Obs
x y
1 30 0.963
2 60 0.925
3 120 0.736
4 240 0.300
5 480 0.174
6 960 0.062
-----
concは被験物質濃度、resはコントロール区の増殖速度で割った比増殖速度です。

これを2パラメータのlog-logistic式にフィッティングさせます。
logEC50をパラメータとするlog-logistic式は:
res = 1/(1 + exp(-a*logEC50+a*log(conc)))・・・(1)
で表現されます。

drcパッケージでは、drmという関数を使います。
"LL.2()"というのが2パラメータのlog-lostic式を表しています。
3パラメータなら"LL.3()"、ワイブル式なら"W1.2()", "W2.2()"などとなります。

drc作者による論文(ETC 2010)を読むと、
毒性試験の解析はlog-logisticとワイブル2種類でやっておけば、
まず大丈夫なのかな、という感じを持ちます。

-----
> # 2パラメータのlog-logistic(LL)でfitting
> P <- drm(res~conc, data=Obs, fct=LL.2())
> summary(P)

Model fitted: Log-logistic (ED50 as parameter) with lower limit at 0 and upper limit at 1 (2 parms)

Parameter estimates:

Estimate Std. Error t-value p-value
b:(Intercept) 2.08641 0.28847 7.23260 0.0019
e:(Intercept) 182.41863 12.37472 14.74123 0.0001

Residual standard error:

0.04808593 (4 degrees of freedom)

-----
ここで、b = 2.08641, e = 182.41863
とパラメータが推定されました。
bが(1)式のa、eが(1)式のEC50に相当します。

初期値の設定なども何も必要なく、
データと関数形さえ指定すれば計算できてしまいます。
初期値の設定などは中でどうやってるんですかね???
(ちなみに初期値に何を入れたらよいか?
を初学者に説明するのは結構メンドイんで助かりますが。。。)

次に、このパラメータを用いてEC10, EC50, EC90を計算してみます。
drcパッケージにはEDという関数があり、簡単に計算できます。
-----
> #EC10, 50, 90の計算
> ED(P, c(10, 50, 90))

Estimated effective doses

Estimate Std. Error
1:10 63.637 9.7827
1:50 182.419 12.3747
1:90 522.914 87.4597
-----
EC10は63、EC50は182、EC90は523と計算されました。
これもとっても簡単で、
中で一体どんな計算をしているのか大変興味があります。

さらに、EDという関数は信頼区間の計算もしてくれます。
(もともと標準誤差(Std. Error, SE)の値が出ているので、
ECx ± t値*SEで簡単に計算できますが。。。)

先ほどのEDに、"interval = "delta"を付け加えます。
-----
> #EC10, 50, 90とその信頼区間の計算
> ED(P, c(10, 50, 90), interval = "delta")

Estimated effective doses
(Delta method-based confidence interval(s))

Estimate Std. Error Lower Upper
1:10 63.6368 9.7827 36.4757 90.798
1:50 182.4186 12.3747 148.0609 216.776
1:90 522.9137 87.4597 280.0865 765.741
-----
LowerとUpperという列が追加されました。
これが95%信頼区間の下限と上限です。
これより、EC50の信頼区間は148-217と計算されました。

モデルの当てはめ具合はグラフを書いて確かめます。
-----
> plot(P, broken=TRUE)
drc.png
-----

ということで、とても簡単に濃度反応関係の解析ができるようです。

posted by shimana7 at 23:27| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月09日

米国EPAのFIFRA-SAPにおける農薬の生態リスク評価方法の議論


農薬の生態リスク評価に関わる方は必読といってもよいかもしれない
貴重な資料が米国で公開されています。
(もう1年くらい経ってますけど。。。)
僕自身大変勉強になったので、ここで紹介してみたいと思います。


米国の農薬取締法
(The Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act, FIFRA)の
科学助言パネル(Scientific Advisory Panel, SAP)の
ミーティング(FIFRA-SAP)が
2012年1月31日から2月2日まで開催されました。

そのテーマは、
"Comparative Effects Methodology Developed by the Office of Pesticide Programs and the Office of Water"
となっており、
FIFRAにおける農薬登録と、
Clean Water Act(CWA, 日本でいえば環境基本法の水部分?)
に基づく水質環境基準策定における、
生態影響評価法について議論された模様です。

水質環境基準は47物質について定められていますが、
そのうち農薬は16物質を占めています。
一方、登録農薬は1000を超えていますが、
そのうちのほとんどについて
水質環境基準を策定するだけのデータが不足しています。

農薬登録審査においては魚類、無脊椎動物、植物について
リスク評価を行っているものの、
群集レベルの評価法にはなっていません。
(つまり、指標生物種のみに対するリスク評価を行っている、
という解釈になっているようで、
この辺は深く掘り下げると結構面白いかも)


このFIFRA-SAPミーティングでは、
以下の6つの事項について
EPAが事前に整理した情報に基づいて具体的な議論が行われました。
1. 急性毒性の予測ツールとしてのQSARの活用
2. 同じく急性毒性の予測ツールとしてのInterspecies Correlation Estimates(ICE)モデルの活用
3. 水生動物の毒性データからHC5を導出するためのSSDの解析手法
4. 少ないデータからHC5を推定するための外挿係数(Extrapolation Factor, EF)について
5. 急性毒性とそのHC5から、慢性毒性とそのHC5を予測するための急性慢性毒性比(Acute Chronic Ratio, ACR)について
6. 水生植物のHC5の推定について

以上の議題を見る限り、
EPAはSSDの活用をさらに推進しようとしているっぽいですね。

農薬の場合、多くの物質でSSD解析に十分なデータが不足しており、
さらに毒性データの数が物質毎にバラバラとなっています。
このような場合の横並びで評価できる手法が
必要となってきていることから、
QSARやICEの活用が検討されています(議題1と2)。

米国における水質環境基準の策定においては、
1985年に公表されたガイドライン
"Guidelines for deriving numerical national water quality criteria for the protection of aquatic organisms and their uses"
(以下、85年ガイドライン)において、
三角分布を仮定したSSDによって基準値を導出することが定められています。
ただし、この85年ガイドラインでは
SSDやHC5といった用語は使用されていません。
その後EUの方で発展した、対数正規分布に基づくSSDからHC5を推定する、
という手法により近づいた形となっています。
(議題3のところで改めて様々なSSD解析法について精査しています)

また、除草剤など植物に特異的に毒性が高い物質について、
これまで水生植物のデータを用いたSSD解析の例が少なく、
この部分も手法的な検討が必要となっています(議題7)。


さらに、全体を通して特徴的な点は、
農薬の作用機作の情報を活用した評価手法の検討に力を入れていることです。
例えば、作用機作毎にQSARやICEモデルを構築する、
デフォルト値に加えて、作用機作特異的なEFやACRを設定する、
などです。


EPAが事前に整理した情報(White paperと呼ばれている)は、
Docket number: EPA-HQ-OPP-2011-0898-0005により公開されています。
各議題を深く掘り下げたAppendixA〜F(それぞれ議題1〜6に対応)もあります。
また、ミーティングでの議論の内容は
Docket number: EPA-HQ-OPP-2011-0898-0027により公開されています。
"Regulation.gov"というWebサイト:
http://www.regulations.gov/#!home;tab=search
で、Docket numberを入力することによりPDFファイルがダウンロードできます。


議論の内容がとにかくメチャクチャ(マニアックで)面白いです。
これを読むと米国での最新の動向がわかります。
これについてもまた今度(余裕が出てきたら)紹介できればと思っています。

posted by shimana7 at 23:07| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする