2013年09月01日

水産分野での生態リスク


今回は文献の紹介です。

眞道幸司 (2013)
水域における化学物質の生態影響リスク推定の現状と水産環境保全に向けた課題
海生研研報,第16号,29−50,2013
http://www.kaiseiken.or.jp/publish/reports/lib/2013_16_03.pdf

良くいろいろ調べてまとめているなあ、と思います。
水産の分野でも生態リスク評価が動き出しているのでしょうか。
海産の試験生物種などは興味深いところです。


種の感受性分布にも若干の記述がありますが、
OECDや米国で「導入が検討されている」、
とか
HC5とPECを比較するリスク評価手法が実用化「されつつある」、
とかいう表現になっているのが気にかかるところです。

米国ではすでに30年近くにわたって運用されていますし、
EUやオーストラリアなどの水質基準は
すでに多くの物質で種の感受性分布から決められています。


とは言いつつも、なかなかこのような日本語の総説はないので、
重要な日本語総説となるのではないかと思います。


posted by shimana7 at 21:37| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月29日

9月の学会発表


9月は学会発表が二件あります。


○永井孝志
情報基盤としての農薬インベントリーとその出口としての生態リスク評価
第19回日本環境毒性学会研究発表会 企画シンポジウム「化学物質の生態リスク評価の今後―多様性ある生態系を理解することから始めよう」 東京 2013.9 口頭(招待講演)

生態リスク評価に必要な毒性や曝露に関する各種データベースをまとめて農薬インベントリーと呼んでいるわけですが、農環研で構築している農薬インベントリ―と、その活用方法について紹介します。



○永井孝志、多屋清志、依田育子
蛍光マイクロプレートアッセイを用いた各種除草剤に対する河川付着藻類の感受性差の評価
日本陸水学会第78回大会 大津 2013.9 口頭

こちらはうってかわって、
久しぶりにゴリゴリの実験系の研究発表です。
最近ゴリゴリ毒性試験やってます。

特に、除草剤の作用機作と種間の感受性差の関係が
かなりはっきりとわかってきました。
これは、同時並行でやっている作用機作から種の感受性分布を予測する方法を
サポートする良いデータになりそうです。


posted by shimana7 at 21:53| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月28日

NOECとLOECにお別れを言うときが来た?


毒性試験の統計解析に関する論文が
東工大の岩崎氏との共著で公表されました:
岩崎雄一,林岳彦,永井孝志 (2013)
NOECとLOECにお別れを言うときが来た?
環境毒性学会誌, 16(1), 13-19


今年3月の農薬学会でも上記論文の内容と同じようなことを話したところです:
○永井孝志、安納弘親
藻類生長阻害試験の統計解析方法:RExcelで行う非線形回帰分析
日本農薬学会第38回大会(つくば)


結構反響があるようなので、
統計解析の底上げのための何らかのきっかけとなったら良いですね。



ところで、、、

経済産業省
平成25年度「化学物質のリスク評価手法の開発・改良に資する科学的知見の充実に向けた調査」に係る委託先の採択結果について
http://www.meti.go.jp/information/publicoffer/saitaku/s130820001.html
の採択課題の一つに:
国立大学法人横浜国立大学
「無影響濃度(NOEC)で観測される毒性影響の大きさ:生態リスク評価への示唆」
という課題もあります。


この手の話題で海外ではNOECを使わない方向へ大きな動きがある中で、
日本の動きはわずかなところですが、
「NOEC = 影響のない濃度」
という誤解が早くなくなっていくことを期待します。
(意図的に誤解させてるのかもしれませんが)

posted by shimana7 at 22:49| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月17日

RExcelのインストール方法が変わった


RExcelをインストールするためのパッケージ
RAndFriendsが利用できなくなってしまいました。
CRANのポリシーの変更に伴うとのこと。

これは大変ショッキングなこと。
RExcelを入門者むけの統計解析ツールとして
どんどん使っていこうとしていた矢先のことです。

ちょうど統計解析の教育用に、
RExcelをつかった統計解析のマニュアルも作っていたところで、
RAndFriendsを使ったインストール方法を記載して、
よっしゃあ!できたー!と
RExcelのサイトを確かめに行ったところ、
あれ、「RAndFriends」がどこにもない!
と気づいたわけです。


結局のところ、RAndFriendsでRやRExcel、
その他必要なソフトやパッケージを
全自動でインストールできたところを、
一つずつ手動でインストールしなければならなくなってしまいました。

手順を以下に記載しておきます。

1.Rのダウンロード・インストール
http://cran.md.tsukuba.ac.jp/
インストーラーをダウンロードして実行する

2.RexcelとStatconnDCOMのインストーラーのダウンロード
http://rcom.univie.ac.at/download.html

3.Statconnのインストール

4.Rの立ち上げ

5.rscproxyパッケージのインストール
  パッケージ→パッケージのインストール→Japan(Tsukuba)→rscproxy

6.ついでに、同様にdrcなどの追加パッケージのインストール(RExcelそのものには必要ないですが)

7.RExcelのインストール

インストールは全てデフォルト設定のままで良いようです。


このように、とっても面倒になってしまいました。

Rを全く立ち上げずにExcel上だけで
すべてのRの計算ができることが売りだったわけですが、
Rを立ち上げないとRExcelがインストールできなくなってしまったので、
このところでもう挫折してしまう人が出てくるだろうと懸念されます。

R上でRExcelをインストールするコマンドを打ち込んでもできますが、
この時点でもう初心者には壁が高すぎます。

CRANのポリシーによるということで、RAndFriendsの復活はほぼ期待できず、
困ったものだなあ。。。と思っています。

posted by shimana7 at 21:55| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月25日

除草剤の藻類影響と藻類エネルギー


先の記事で紹介した藻類のハイスループット試験の論文ですが、
電子版ではすでに公開されています。
Nagai Takashi, Taya Kiyoshi, Annoh Hirochica, Ishihara Satoru (2013)
Application of a fluorometric microplate algal toxicity assays for riverine periphytic algal species.
Ecotoxicology and Environmental Safety, in press
http://dx.doi.org/10.1016/j.ecoenv.2013.04.020

この方法で各種藻類に対する除草剤の影響を現在調べているところですが、
ふと気になって、最近話題の藻類エネルギーのことを調べてみました。


藻類エネルギーと言えば、
もともと藻類学が強かった我が筑波大が今や聖地のようになっています。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/index.html
(私が藻類好きなのもこのおかげです)

私が大学時代に住んでいた平砂宿舎1号棟の
すぐ目の前にあった平砂プールが
いまや大規模藻類培養実験施設に変わっているのはとても感慨深いです。
(当時すでにプールとしては使われておらず、
いつも魚を捕って遊んでいた)



オイル産生藻類のボトリオコッカス(緑藻)と
オーランチオキトリウム(ラビリンチュラ類)を用いて、
開放系大規模生産実証試験として、
つくば市内の耕作放棄地を活用した屋外大量培養の研究開発に着手します、
と研究計画にはあります。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/02project/index.html

開放系での培養となると、いろんな藻類あるいは雑草が繁殖しますので、
それを抑えるために除草剤の使用が不可欠となるでしょう。
ここが一番の私の気になるところでした。

上記と同じ渡邉・彼谷研究室のサイトを見ていくと、、、
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改良品種の開発
除草剤耐性の突然変異株の作成に成功しました。
この成果とボトリオコッカスが強い抗生物質耐性をもつことが判明したことにより、異種混入を制御することが可能となり、開放系での大量生産技術開発への道を大きく拓きました。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/02project/index_02.html
-----

とありました。
なるほど、遺伝子組み換え作物でよく使われる考え方ですね。
(変異体だから定義上遺伝子組み換えではないのでしょう)

論文はたぶん↓だと思います。
Ioki, M, Ohkoshi, M, Nakajima, N and Watanabe, M (2012) Isolation of herbicide-resistant mutants of Botryococcus braunii. Bioresource Technology 109, 300-303
http://dx.doi.org/10.1016/j.biortech.2011.07.101

パラコートとグルホシネートに耐性を持つ変異体を開発したとあります。
なんでこの二剤なんだろう???
と思いましたが、おそらく代表的な非選択性除草剤ということで選んだのでしょう。

ただし、これらの剤は残念ながら藻類にはあまり毒性が強くないので、
これらを使用するとなると、
とんでもない量をまかないと効き目が出ないと思われます。

実際に論文中の実験では
パラコートを13mg/L、グルホシネートを100g/Lも入れています。
こんなのを使って休耕田で野外培養なんてやったら大変なことになりそう
というのが正直な感想です。
ちなみに水田で使用する除草剤の田面水中濃度は最大でも1mg/L程度です。
新規技術に伴うリスクとして考える必要が出てくるでしょう。


各種藻類に対する除草剤の影響を調べているところなので、
こういう用途に使うならもっと適した剤がいくつもあるのにな、
と思ってしまいます。

つづく。。。かも
posted by shimana7 at 22:53| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月10日

新規論文


新しい論文が受理されました:
Nagai Takashi, Taya Kiyoshi, Annoh Hirochica, Ishihara Satoru (2013)
Application of a fluorometric microplate algal toxicity assays for riverine periphytic algal species.
Ecotoxicology and Environmental Safety, in press

2011年ころから始めたハイスループットな藻類毒性試験法の開発です。
日本の河川で優占する付着藻類の中から代表種を5種選択し、
その5種類の藻類の毒性試験を同時に行うことができます。

これを使うと、たった一度の試験で、
種の感受性分布解析まで可能な量のデータが取得できてしまいます。

この論文はとりあえず試験法の部分のみを書いたものですが、
現在この方法ですでに大量の毒性データを得ることができています。

既存のデータを使ってできる解析は大体やりつくしてしまった感があり、
大量にデータを取得できるようになるとまた新たな世界が開けます。
(ネタバレになるのであまり書けませんが。。。)

非常に便利な試験法なので、
日本語の試験法マニュアルを作って、
今年度中に公開することを予定しています。
試験法だけではなく、試験データの統計解析方法の部分も充実させたいな、
と思っているところです。

posted by shimana7 at 21:54| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月19日

講演:解決志向リスク評価


講演の宣伝です。
日本リスク研究学会のシンポジウム(@東大)で講演を行います。


http://www.sra-japan.jp/cms/modules/piCal/index.php?smode=Daily&action=View&event_id=0000000057&caldate=2013-4-19
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日本リスク研究学会 第26回シンポジウム
《食品安全のためのリスク分析のこれまでとこれから》

日時:2013年6月14日(金)
 第一部 14:00〜17:00
 第二部 17:20〜19:20(予定)
会場:東京大学山上会館
参加費:
 第一部 シンポジウム 会員・協賛会員及び学生 2,000 円、一般 3,000 円
 第二部 意見交換会 会員・協賛会員及び学生 3,000 円、一般 4,000 円 (立食代を含む)
主催:一般社団法人 日本リスク研究学会

開催趣旨:BSE問題をきっかけに食品安全委員会が設立され、リスク評価とリスク管理を機能的・組織的に分離する形でリスク分析が導入されてから今年でちょうど10年になります。最近では東日本大震災後に生じた食品中の放射性物質の問題においてもリスク評価は注目を集めました。本シンポジウムは、食品安全を題材に、様々な切り口から、リスク分析が食品安全分野においてうまく機能してきたかどうかを振り返り、リスク分析が社会の安全のためにさらに貢献できるように、これからのあるべき姿を探っていきたいと考えています。

第一部 プログラム

松尾真紀子氏(東京大学政策ビジョン研究センター研究員)
「日本の食品安全行政ガバナンスの制度変容と今後の課題」

広瀬 明彦氏(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター総合評価研究室 室長)
「食品等に含まれる化学物質のリスク評価の経験とそこから見えてきた課題」

山崎洋氏(関西学院大学名誉教授、元IARC研究部長)
「発がん性評価のありかたーIARCの経験をもとに」

永井 孝志氏 (独立行政法人 農業環境技術研究所 研究員)
「リスク評価とリスク管理の位置づけを再構成する解決志向リスク評価」


総合討論

司会・進行: 岸本充生((独)産業技術総合研究所 安全科学研究部門 研究グループ長)
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タイトルにある解決志向リスク評価とは、
Solution-Focused Risk Assessmentの訳です。

Solution-Focused Risk Assessmentについては
以前の記事でも紹介しました。
http://shimana7.seesaa.net/article/301037999.html


私の研究テーマ(農薬の生態リスク評価)とは少し離れます。
ただ、私はもともと基準値の設定プロセスに強い興味を持っています。

リスク評価はADIやTDIなどの線引きする。
リスク管理は基準値を決めてそれ以下になるように管理する
(基準値を超えた超えないで一喜一憂する)
というやり方へのアンチテーゼとして解決志向リスク評価があります。

いろんな事例をもとにこの考え方の極意を
紹介できればいいなと思っています。
posted by shimana7 at 21:15| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月12日

リスク評価と管理の分離についてのメモ


さて、現在の食品安全に関する日本のリスク評価と管理については、
リスク評価機関がが食品安全委員会
リスク管理機関が農水省と厚労省となっており、
このトロイカ体制によって
リスク評価とリスク管理が機能的にも組織的にも分かれた形となっています。

リスク評価と管理の分離については、
Red Bookと呼ばれる1983年のNRCによる報告書に
良く記載されています。



ところで、
農水省が行っているリスク管理検討会というものがあります。
http://www.maff.go.jp/j/study/risk_kanri/about.html


平成17年度の第二回会議の概要
http://www.maff.go.jp/j/study/risk_kanri/pdf/summary_6.pdf
から、

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Codexおけるリスク評価とは、独立した機関による評価であると紹介されたが、リスク管理機関の一部によるリスク評価というのは否定されるのか。⇒Codexの「リスク分析の作業原則」と「リスク評価の役割」という2つの文書において、リスク評価機関とリスク管理機関には、機能的な分離(functional separation)を求めている。また、リスク管理機関とリスク評価機関のコミュニケーション(interaction;相互作用)を併せて求めている。海外の例をあげると、アメリカでは試行錯誤の結果として、リスク管理機関の中にリスク評価を行う組織があるが、機能的には分離。ヨーロッパでは組織から分けているところがあり、例えば、ドイツでは、同じ組織でリスク管理とリスク評価を行っていたものを2つの組織に分離。あくまでもCodexが言っているのは、機能的な分離と相互作用についてであり、様々な形態がある。
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ふむふむ、
米国EPAでは評価と管理を両方行いますし、
機能の分離と組織の分離は別物だということですね。

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ノルウェーでは、評価機関と管理機関の組織を分離し、最終的な責任の所在が曖昧になって失敗したと言われている。日本もリスク評価機関とリスク管理機関に組織を分離したことがいいのかどうかについて、今後評価する必要がある。
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え、ええーっ!?

いまさらですが、そういう話は初耳でした。
この意見、超重要な意見だと思うのですが、
この意見に対しては特に返答が示されておらず、
その後の会議でもこの話題が取り上げられることはありませんでした。
このノルウェーの失敗事例についての詳細が知りたいです。

まあ組織の話は農水省単独でできることではありませんけど、
では一体、トロイカ体制の問題を議論できるのはどこなのだろう??
と疑問に思ってしまいます。

これが平成18年の話ですから、
3.11を経てこの組織の分離の問題は再燃してもおかしくないはずですね。


posted by shimana7 at 10:36| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月02日

カゲロウが死んで何が悪い?


水生生物保全に係る水質環境基準については
亜鉛とノニルフェノールに加えて、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸が追加になるようです。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16182

最初にできた亜鉛の環境基準はもう10年も前になりますが、
いまさらまた追っかけ始めています。
基準値オタクの一員としては、
基準値をめぐるエピソードやドラマってやっぱり面白いなと思うところです。

基準値の科学的な解説自体も重要ですけど、
その裏側にある社会的なあれこれは
科学のみで語ることのできない「線引きの本質」をえぐりだすような気もするところです。


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朝日新聞2003年6月26日
水中の亜鉛規準 産業界から反発 答申見送り 「カゲロウが死んで何が悪い」
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ugoki/ugoki_03/ugoki_03_06.html

 魚介類やプランクトンなど水中の生態系を守るため亜鉛の環境基準の設定を検討している中央環鏡審議会水環境部会で25日、産業界出身の臨時委員が設定に反対し、同日に予定されていた答申が見送られた。
 専門委員会がまとめた基準は河川が1リットルあたり30マイクログラム(マイクロは100万分の1)、海が同10〜20マイクログラム。イワナやヒラタカゲロウの個体数が減少した実験結果を参考に決めた。部会では、産業界出身の委員が経済に悪影響があるとして反対。委員の一人が「ヒラタカゲロウが死んで何が悪い」と発言したことから議論が紛糾した。
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「カゲロウが死んで何が悪い」
というのは(飲み屋ならともかく)審議会という場にあってはかなり衝撃的な発言ですよね。
でもこれ本当に言ったのかどうかが気になります。

この会議の議事録は環境省から公開されています:
中央環境審議会水環境部会(第8回)議事録
http://www.env.go.jp/council/09water/y090-08a.html

この中には「カゲロウが死んで何が悪い?」という言葉、
もしくはそれに類似する表現は出てきません。

実際には言っていたけど議事録には残らなかったのか、
それとも新聞記事での表現が誇張されたものだったのかはわかりません。
とても気になるところです。
posted by shimana7 at 22:18| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月25日

Toxicokinetic model


藻類の個体群動態モデルにトキシコキネティクスを導入したモデル
についての論文がHuman and Ecological Risk Assessment誌に受理されました。

Nagai Takashi (2013)
Algal population growth model integrated with toxicokinetics for ecogical risk assessment under time-varying pesticide exposure.

トキシコキネティクスを導入するというのは、
毒性が水中の濃度に依存するのではなく、
水中から体内に取り込まれ、体内にある農薬のターゲットサイトに運ばれ、
そこでの濃度に依存して毒性をもたらす、
というメカニズムをモデル化することです。
毒性の経時変化を予測する際に有効になります。

私は以前にアオコの研究をしていた際に
鉄の取り込み速度を考慮した藻類の個体群動態モデルを
作っていますので、それの毒性版ともいえます:
Nagai Takashi, Imai Akio, Matsushige Kazuo, Fukushima Takehiko (2007)
Growth characteristics and growth modeling of Microcystis aeruginosa and Planktothrix agardhii under iron limitation.
Limnology, 8(3), 261-270


河川水中の農薬の濃度は農薬使用の時期に依存して大きく変動するため、
そのような状況下での個体群の影響と
その後の回復性を予測できるモデルになっています。

生態リスクのエンドポイントとして、EC50がよく使われますが、
同じEC50に相当する曝露が、
農薬によって異なる個体群レベルの影響をもたらす
(回復できるかどうか、回復にどのくらい時間がかかるか)
ことを、シミュレーションによって示すことができました。


ところで、
今回のモデルはDEBコミュニティな人たちに散々叩かれまして、
自分としては少し不本意な形にモデルを修正せざるをえませんでした。
(結果としてはほとんど変わらないのですが)

私は既存の毒性試験の濃度反応関係をうまく使って
フィッティングで求めるパラメータ数をなるべく減らしたいのですが、
どうしてもモデルの全パラメータを同時にフィッティングで求めないと
この人たちにとっては「modeling practice」がダメなのだそうです。

このやり方は「modeling practice」としては美しいやり方ですが、
実用的にはいまいちなモデルになってしまうと思います。
(パラメータの持つ意味がわからなくなって、
メカニズムベースのモデルと呼べなくなってしまう)

化学物質の生態リスクの分野で個体群モデルが
なぜ実用化されないのかは、
個体群モデルな人たちの閉鎖性にあるのではないか
という気さえしてしまいました。


自分としては、もうこのテーマでの研究は方向性を変えて、
ハイスループットアッセイでモデルパラメータを効率よく決定できるような
そんな研究に今後はしていきたいと思っています。
posted by shimana7 at 23:34| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする