2015年09月13日

環境毒性学会


第21回日本環境毒性学会研究発表会
(9月2〜3日 東洋大学)
に参加し、二題の発表を行いました。

○永井孝志, De Schamphelaere KAC, van Regenmortel T
Biotic Ligand Modelを用いた日本の水質における金属の生態影響評価
(口頭)

○谷地俊二、永井孝志、勝又政和
藻類の化学物質曝露期間とその後の回復期間におけるクロロフィル遅延発光の変動
(ポスター)

私の発表はBLMの宣伝ということで、
昨年ベルギーで行った研究を発表しました。
この日は曝露と毒性の統合に関する特別セッションがあったのですが、
私の発表の方がよっぽどこのテーマにふさわしかったのではないかと思います。
リスク評価では曝露と毒性を統合するのは当たり前ですからね。。。

あとは、いろいろと知り合いと情報交換できたのは良かったです。
なかなかそういう機会にも飢えているのです。

ところで、谷地さんは藻類の回復性試験に関する発表で、
ポスター賞を受賞しました。
喜びの写真を掲載します。
ポスター賞.JPG
posted by shimana7 at 22:11| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月04日

ネオニコシンポ報告


遅くなりましたが報告。
7月15日に、国立環境研究所において、
公開シンポジウム
「ネオニコチノイド系農薬と生物多様性〜何がどこまで分かっているか? 今後の課題は何か?」
が開催されました。
私はトップバッターで講演を行いました。

200名以上の方にご参加いただき大盛況でした。
五箇さんの集客力は凄いです。
イベント運営の面でも大変参考になりました。


地元紙の常陽新聞には1面トップで記事が掲載されました。
http://joyonews.jp/smart/?p=9375


当日の様子などは以下のサイトに詳しくレポートされています。
バッタもん日記
http://d.hatena.ne.jp/locust0138/20150716/1437065147


いずれ発表内容は総説などにまとめて公表したいと考えていますが、
講演の中から、ここではひとつ
象徴的なグラフを紹介したいと思います。
ネオニコチノイド系殺虫剤7剤の出荷量の合計と、
FAXの普及率の経年変化を示したものです。

ネオニコ出荷量相関.png

FAXの普及率は内閣府・消費動向調査、
ネオニコの出荷量は化学物質データベース WebKis-Plus
から得たデータです。

見事に一致することがわかります。
この高い相関(r=0.96!)は完全に偶然の産物です。
相関と因果関係の違いに注意しなければいけません。
経年変化が一致する(農薬の使用量と生物の減少など)というだけでは
エビデンスとしては非常に弱いものであると言わざるを得ません。



そして、そうこうしているうちに、
イギリスではネオニコチノイド系農薬の
クロチアニジンとチアメトキサムの使用が限定的に解禁へ動くそうです。

サイエンスメディアセンターに
この件に関する専門家コメントとして、
私のコメントが掲載されています。
http://smc-japan.org/?p=4126

posted by shimana7 at 22:04| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月23日

新しい論文


新たに論文が受理されました。
Takashi Nagai, Kiyoshi Taya and Ikuko Yoda (2015)
Comparative toxicity of twenty herbicides to five periphytic algae and the relationship with mode of action.
Environmental Toxicology & Chemistry
http://dx.doi.org/10.1002/etc.3150


これは、以前に農業環境技術研究所で公表した
河川付着藻類を用いた農薬の毒性試験マニュアル
http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/algae/?0317#mokuji
に基づいて、除草剤20種の毒性試験を行った結果をまとめたものです。

5種類の付着藻類を用いた毒性試験を行い、
従来標準種として使用されてきた緑藻Pseudokirchneriella subcapitata
の毒性と比較してみると興味深いことがわかりました。

藻類の中でどの種に毒性が高いかは明確に作用機作特異的であり、
標準緑藻Pseudokirchneriella subcapitataに対して毒性が高い作用機作
違う種類の緑藻Desmodesmus subspicatusに対して毒性が高い作用機作、
珪藻に対して毒性が高い作用機作、
シアノバクテリアに対して毒性が高い作用機作、
など、バラエティに富んでいます。

そして、3つの作用機作の除草剤では、
藻類のみでも種間の感受性差はなんと10000倍にもなっていました。
どの種のデータでリスク評価をするかで結果が大きく違ってきてしまいます。

つまり、除草剤で標準緑藻のみのデータを用いたリスク評価を行うと、
リスクを見誤ってしまいます。
作用機作によって追加のデータが必要になるか、
種の感受性分布を用いることが適切と考えられます。


全部で100の毒性試験の増殖速度の全データを
Supporting Informationとして掲載してあります。
なにかに使ってみたい人はぜひどうぞ。

posted by shimana7 at 22:42| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月22日

ネオニコシンポジウム


今年の生態学会@鹿児島でも開催された、
ネオニコチノイド系農薬に関する企画がつくばで開催されます。
私も講演します。

公開シンポジウム
「ネオニコチノイド系農薬と生物多様性〜何がどこまで分かっているか? 今後の課題は何か?」
2015年7月15日(水)13:30 〜 17:30@国立環境研究所(つくば) http://www.nies.go.jp/whatsnew/2015/2015/20150622/20150622.html

【プログラム】
13:30 開会の挨拶 住 明正(国立環境研究所理事長)
13:40「ネオニコチノイド系農薬の基礎知識」 永井孝志(農業環境技術研究所)
14:20「ネオニコチノイド系農薬等のハナバチ類への影響」 中村 純(玉川大学)
14:50 休憩
15:00「ネオニコチノイド系農薬の生態リスク評価」 五箇公一(国立環境研究所)
15:40「水田におけるネオニコチノイド系農薬影響実態」 日鷹一雅(愛媛大学)
16:20 パネルディスカッション
    コーディネーター 林 岳彦(国立環境研究所)
    パネラー 講演者
17:20 環境省コメント (環境省 水・大気環境局)
17:30 閉会


このテーマに関して言いたいことはたくさんありますが
時間内に分かりやすく現状についてお話できればと思います。

posted by shimana7 at 22:26| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月11日

講演予定


日本学術会議主催「安全工学シンポジウム2015」
http://www.anzen.org/index.html
にて、7月3日に講演+パネルディスカッションに参加します。
会場は日本学術会議です(初めて行きます、六本木にあるんですね)。


パネルディスカッションのテーマは
「工学システムに対する社会の安全目標 」
です。
以下のミニ講演6題の後に、
講演者6名で100分ほど議論が行われるとのことです。

工学システムの社会安全目標の実用化に向けて
○野口和彦(横浜国立大学)

原子力の安全目標
○成合英樹(筑波大学)

船舶の安全目標
○田村兼吉(海上技術安全研究所)

化学プラントの安全目標
○中村昌允(東京工業大学 イノベーションマネジメント研究科)

食の安全から考える安全目標と基準値
○永井孝志(国立研究開発法人農業環境技術研究所)

化学物質分野における安全目標 vs. 代替アプローチ
○岸本充生(東京大学)


私の話は「基準値のからくり」ネタを持ち出して、
それと現在議論されている安全目標とを関連付けて議論しようと思います。

安全目標については、
日本学術会議が2014に以下の報告書を公表しています。
工学システムに対する社会の安全目標 - 日本学術会議
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140917-2.pdf
ALARPの考え方等が紹介されています。

posted by shimana7 at 22:30| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月09日

SETAC EU in Barcelona


5月3−7日にかけて、スペインのバルセロナで開催された
SETAC Europe 25th Annual Meetingに参加してきました。
http://barcelona.setac.eu/home/?contentid=767&pr_id=766

写真.JPG
会場のバルセロナ国際会議場

P1020128.JPG
小高い場所からのバルセロナ市街


私は二題のポスター発表を行いました。
両方とも化学物質の複合影響に関する話題で、

〇Nagai T, De Schamphelaere KAC
Mixture toxicity of zinc and copper on the growth of the diatom and comparisons with concentration additive and independent action predictions
は金属の藻類に対する複合影響

〇Nagai T, Taya K, Kitayama I
Can we apply concentration additive and independent action mixture effect model to species sensitivity distribution? - An experimental validation using herbicides.
は除草剤の藻類に対する複合影響、特にSSDへの複合影響モデルの適用について
を報告しました。

複合影響モデルはSSDにも適用可能であることを
実験的に検証した部分は結構ウケが良かったような気がします。



複合影響についての発表は非常に多く、
かなりのホットトピックであることを実感しました。
しかし、ポスターで直接いろいろ話を聞くと、
結構みなさん冷めている印象も持ちました。
結局のところ、レギュラトリーな部分での活用場面では
濃度加算(Concentration additive, CA)で計算する以外に手段がなく、
CAで安全側に予測できているかどうかを
ひたすら色んな物質、生物種で確認しているだけ、
という状況であるとも言えます。
提唱から今年でちょうど20年経った
ファンネル仮説に回帰しつつあるとも言えます。



農薬関連では、やはりネオニコチノイド系殺虫剤は盛り上がっています。
ミツバチに対する影響評価法の発表も多くありました。

しかし、去年あれほど盛り上がっていたメソコスム試験の新しい解析方法
すなわちMDDについては驚くほどに盛り下がっていた様な印象です。
実際にMDDが、規制に関するリスク評価に適用され始め、
ちょっどヤバい方向に進んでいることが露見してきたからかもしれません。
(完全に邪推ですが。。。)

新規試験生物では、
水生高等植物の試験ガイドラインが昨年OECDから公表されたことで、
水生生物はあらかた片付いたという印象で、
(水生菌類のみが最後の砦かも?)
次は陸上動植物に興味がシフトしてきていることがうかがわれました。

もうちょっとマニアックな話については、
また後日書くかもしれません(?)
posted by shimana7 at 22:47| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月28日

EUにおける、種の感受性分布を用いた農薬の生態リスク評価


EUのリスク評価機関であるEFSAは、
農薬のリスク評価書を順次公表していますが、
その中で、2013年に殺虫剤の
クロラントラニリプロールの評価書が公開されています。
EFSA Journal 2013;11(6):3143
Conclusion on the peer review of the pesticide risk assessment of the
active substance [chlorantraniliprole].
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/3143.htm

生態リスク評価では種の感受性分布(SSD)を使ったことが明示的に
書かれている珍しい例です。

無脊椎動物に対する毒性データが9種で得られているので、
SSD解析を行った結果、分布の5パーセンタイル値(HC5)が2.91μg/L
が得られ、それを不確実性係数5で割って0.58μg/Lが、
regulatory acceptable concentration (RAC) と計算されています。

EFSAはEuropean Food Safety Authority、
つまり食品安全に係わる組織ですが、
生態リスクも評価するし、ミツバチの評価もするのでエライと思います。
(日本の食安委も見習うべきですね)



ちなみにこのクロラントラニリプロールという殺虫剤は、
この5年くらいで使われるようになり、
ネオニコチノイド系農薬に代わって使われ出してきています。
新農薬と言うならせめてこういうのを言うべきですね。
もう20年以上も使われているネオニコチノイド系農薬を新農薬
とかいうのはいいかげんにやめて欲しいものです。



さらにちなみに基準値豆知識ですが、
クロラントラニリプロールの
日本における農薬登録保留基準は2.9μg/Lです。
http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun/rv/k04_chlorantraniliprole.pdf

これは、
オオミジンコ 48hEC50 = 11.6 μg/L
ヌカエビ 96hLC50 = 680 μg/L
ユスリカ 48hLC50 = 85.9 μg/L
という節足動物の毒性試験結果から、
最小値である11.6を不確実性係数4で割って導出されたものです。
(節足動物で3生物種のデータが存在する場合、不確実係数は通常の10ではなく4を適用)


posted by shimana7 at 22:13| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月10日

環境研究総合推進費


H23-H25までに取り組んだ環境省の環境研究総合推進費ですが、
今年度に最終評価を終え、その結果が公表されています。

平成26年度 事後評価 結果一覧表
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/suishin/kadai_hyouka/h26/post_valuation.html

5C-1102 適切なリスク管理対策の選択を可能にする農薬の定量的リスク評価法の開発 PDF [ 613 KB]
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/suishin/kadai_hyouka/h26/pdf/5C-1102.pdf

総合ではA+の評価を頂きました。
3年間メインの仕事で取り組んだので、
良い評価が得られて何よりです。



詳細な報告書については以下で読めます。

平成25年度 環境研究総合推進費 終了成果報告集
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/suishin/kadai/syuryo_report/h25/h25_suishin_report.html

5C-1102
適切なリスク管理対策の選択を可能にする農薬の定量的リスク評価法の開発
〈H23〜25年度〉 5,515 KB
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/suishin/kadai/syuryo_report/h25/pdf/5C-1102.pdf



最後のどうでもよいシリーズはそろそろ終わりにします。
ブリュッセルの巨大クリスマスツリー
P1010881.JPG


posted by shimana7 at 23:36| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月08日

2015年


ベルギーから日本に帰国し、2015年が幕あけました。
まだまだ生活は落ち着かなく、職場では書類の山と格闘しているところです。

ベルギーでの研究生活を総括したいところですが、
ベルギーではいろんなことがありすぎて、
さらに今やるべきことがたくさんありすぎて、
もう少し先になりそうです。


さて、正月中にちょこちょこっとWEBページを更新し、
「基準値のからくり」のまとめサイトを作りました。
http://shimana7.web.fc2.com/topics/karakuri1.html


活動予定としては、3月の生態学会(鹿児島大学)で発表します。
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/62/T08.html

国環研の林さん企画のネオニコチノイド系農薬についての話題提供です。
私の発表タイトルは「ネオニコチノイド系農薬の基礎知識」
ということで、
農薬やっている人なら当たり前な知識、
でも生態屋さんは案外知らないかも?
というようなことを話すことになります。

というわけで今年もよろしくお願いします。
posted by shimana7 at 22:48| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月14日

生態リスク評価関連の海外の動向


せっかく現在海外にいるわけですが、なかなか余裕が無く
生態リスク評価の海外動向をきちんと追うことができていませんでした。
4月以降でも生態リスク評価関連の海外の動きはいくつかあるようです。
以下に備忘録としてメモを書きますが、
きちんとレポート等読めているわけではありません。

また、以下に書いた以外にもありますが、
それはまた違う機会に書いてみようと思います。



-----
1,オランダでイミダクロプリドの水質基準値案が出された

Water quality standards for imidacloprid : Proposal for an update according to the Water Framework Directive
http://www.rivm.nl/en/Documents_and_publications/Scientific/Reports/2014/april/Water_quality_standards_for_imidacloprid_Proposal_for_an_update_according_to_the_Water_Framework_Directive

かなり厳しい基準値の様に見えるが、
慢性影響をベースとしているので、このくらいにはなるかな、という感じ
年間平均値でこれを超えるようなことは無さそう。



2,OECDのテストガイドラインにフサモ(Myriophyllum)の試験法が追加

Test No. 238: Sediment-Free Myriophyllum Spicatum Toxicity Test
Test No. 239: Water-Sediment Myriophyllum Spicatum Toxicity Test
http://www.oecd-ilibrary.org/environment/oecd-guidelines-for-the-testing-of-chemicals-section-2-effects-on-biotic-systems_20745761

藻類やウキクサに対して毒性が高くないオーキシン系の除草剤を
メインターゲットとした試験法。



3,ECETOCから、種の感受性分布(SSD)についてのレポートが公開

WR 28 : Estimating toxicity thresholds for aquatic ecological communities from sensitivity distributions | 02/12/2014
http://www.ecetoc.org/index.php?mact=MCSoap,cntnt01,details,0&cntnt01by_category=22&cntnt01order_by=date%20Desc&cntnt01template=display_list_v2&cntnt01display_template=display_details_v2&cntnt01document_id=9643&cntnt01returnid=59

SSDのさらなる活用についての今後の課題などがまとまっている感じ



4,EFSAが複数の化学物質によるリスク評価法についての会議を開催

EFSA Scientific Colloquium N°21: Harmonisation of human and ecological risk assessment of combined exposure to multiple chemicals
http://www.efsa.europa.eu/en/events/event/140911.htm

生態影響についてもプレゼン資料が公開されている。
濃度加算モデル(Concentration Addition Model)の
レギュラトリーな活用に向かって突き進んでいるかのように見える。

posted by shimana7 at 06:31| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする