2017年02月03日

委員の仕事


この時期は年度末ということもあり、行政の検討会が非常に多いです。
先週は3回ありました。そして今日もこれから検討会です。

今日の検討会は環境省が設置する
「水産動植物登録保留基準設定検討会(以下、水産検討会)」
というもので、
水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準
http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun.html
という農薬の生態リスクに関する基準値を決めるための検討会です。
私は平成27年度から委員になっています。

この基準値を決めるプロセスはおおむね以下の順序です。

行政で基準値案の作成

水産動植物登録保留基準設定検討会(非公開)
http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun_kentou/index.html

中央環境審議会 土壌農薬部会 農薬小委員会(公開)
http://www.env.go.jp/council/10dojo/yoshi10-04.html

環境省からパブリックコメント

基準値決定(環境省告示)

水産検討会は非公開で議事要旨のみが公開されます。
非公開なので、かなりすったもんだの率直な議論が交わされます。

提出される毒性データ等が非常にクリアな場合は
スムーズに承認されますが、
古いデータで現在のガイドラインと試験法が異なる、
詳細が不明な点がある、
等データに問題がある場合には時間がかかります。

水に溶けにくく設定濃度と実測濃度に開きがある場合や
分解が早く、代謝物の毒性を考慮するかどうかなど、
データの解釈が難しいものもあります。

追加の解析を求めるなどで、一旦却下される場合もあります。

ここできちんと理論を固めておかないと、
次のプロセスである農薬小委員会でまた引っかかってしまうため、
水産検討会でなるべく揉んでおくことが重要です。

こういう委員の仕事は研究業績にはなりませんし、
(むしろ研究の時間を割かれる)
なかなか表に出にくい裏方の仕事なのですが、
行政の研究者としては行政の役に立ってなんぼだと思います。

今後もたまにはこういう仕事も紹介してみたいと思います。
posted by shimana7 at 10:39| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月17日

出版 その後


「基準値のからくり」の出版からそろそろ二ヶ月経ちます。
現在第3刷まで出ています。
(今現在アマゾンでは品切れになってしまっていますが)
各種電子版も発売となりました。



出版後に発見された間違いなどもあり、
私の執筆部分では、以下のように修正されております。
図の間違いが多いです。
何度も何度も確認しているはずなのですが、
こういうのが出てきてしまい、申し訳ない限りです。

第2版
・p.146 図5-6右側「53.3%(平均体重)」→「53.3kg(平均体重)」
・p.217 図8-2左下「急性慢性毒性値」→「急性慢性毒性比」

第3版
・p.63 図2-5「無機態ヒ素の摂取量」→「アクリルアミドの摂取量」
・p.133 図5-1キャプション@「無毒性摂取量」→「無毒性量」



ネットやメディアでもいくつか紹介されており、
嬉しい限りです。

ネットでの紹介は検索すればたくさん出てきますが、
中でも以下(私の職場)の紹介は必読です。

独立行政法人農業環境技術研究所 農業と環境 No.172 (2014年8月1日)
http://www.niaes.affrc.go.jp/magazine/172/mgzn17212.html
(もちろん私が書いたものではありませんし、
私が依頼したものでもありません)



メディアでも以下のようなところで紹介されています。

週刊現代 7月26日・8月2日合併号 164-166ページ
身近な「基準値」はウソだらけ 

日経サイエンス 9月号 110ページ
森山和道の読書日記

日経新聞7月30日夕刊
目利きが選ぶ今週の3冊 竹内薫

特に竹内薫さんに取りあげて頂いたのは嬉しく思います。
この本の原稿を書くとき、
一般向けの文章を書いたことがなかったため、
科学の新書ってどう書くんだろうかと、
竹内さんの本などを読んで参考にさせて頂きました。


posted by shimana7 at 05:48| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月01日

2012新年


あけましておめでとうございます。
昨年もいろんな方に大変お世話になりました。
特に東日本大震災の際はつくばも被災し、
水や食料の確保、ライフラインやインフラの素早い復旧など、
多くの人の陰ながらの大変な努力に支えられました。

今年は本格的にポスト3.11社会が動き出してきます。
リスク研究者としてのポスト3.11社会との関わりあい方、
まだまだ迷うことが多いです。
迷いながらでもとにかく手探りで前に進むしかありません。

研究のほうでは2011年度から外部予算によるプロジェクトが
2つスタートし、マネジメント業務が増えました。
この流れに乗って、チャンスをきちんと形にしたいです。

今年も研究やリスク学的活動の両者ともに
アウトプット・ドリブンでやっていきたいです。
たくさんのアウトプットを出せるよう頑張ります。

今年もどうぞよろしくお願いします。
posted by shimana7 at 13:44| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月28日

年末


今年の業務は本日で終了です。
12月は
所内プロジェクトの成績とりまとめたり、
来年度の予算や体制を考えたり、
藻類の培養をやったり、
個体群動態モデルの解析をやったり、
な感じでした。

それと
仕事の任期が残り一年となりましたので、
任期満了時に仕事をクビになるかならないかの審査も受けました。
私的にはすべてを出し切ったと思います。
結論は年明けに持ち越しのようです。

まあそれでもいろんなものが片付いたので
スッキリと年末を迎えられそうです。

今年の総括などはまた時間があればやってみたいです。


それでは皆様良いお年を!
来年もよろしくお願いします。

posted by shimana7 at 22:27| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月25日

筑波大での講義内容


先日、筑波大学で化学物質のリスク評価についての講義をする機会がありました。
環境ディプロマティックリーダーの育成プログラムという
専攻の修士課程の学生向けの講義です。
この専攻はすべてを英語のみを用いて修了できるというところが特徴で、
当然講義もすべて英語です。

私の担当は「水総合学」という科目の二コマ分で
昨年度から担当しています。
約3時間で水に関わる化学物質のリスク評価について
概要をざらっと説明するような内容になりました。
とりあえず現状はこうなってますよ、という表面的な内容です。

受講生による感想も帰ってきて、
プレゼンテーションの技術は素晴らしいという
感想が多くあったのは嬉しいかぎり。
議論の時間も欲しかったという意見もありました。
英語でファシリテーションまでできないということもあるのですが、
ある程度の基礎知識を詰め込んでからじゃないと
ディスカッションもあまり意味がないと思っています。


講義の概要は以下に簡単に紹介しますが、
こんな内容であれば話すことができますので
ご要望がありましたらお声をかけて頂ければ
無理のない範囲で対応したいと思います。。
英語でもできますがあまりに負担が大きいので、
できれば日本語でやりたいです。。。


講義内容は以下の4つのパートに分けました。
1.リスク評価とリスク管理の紹介
2.ヒト健康リスク評価
3.生態リスク評価
4.今後のリスク管理に向けて

パート1では、
・リスクとは何ぞや?その定義について
・公害と環境リスクは何が違うのか?
・リスク評価とリスク管理の関係について
を話しました。

その中で、
a) 現状のリスクの大きさを明らかにする
b) リスクの大きさを考慮して、複数のリスク低減対策を提案する
c) 各対策を打った場合のリスク低減効果を予測して、その効率を評価する
d) 効率を考慮して実行するべき対策を決定し、実行する
という理想的な評価・管理のプロセスを説明し、
リスク評価の役割として、a)とc)に活用できるようなことを行うのが望ましい
ということを話しました。


パート2では、
まずリスク評価のプロセス
(ハザード同定、影響評価、曝露評価、リスクキャラクタリゼーション)
を説明し、4つの事例を示しながら、これらのプロセスの具体例を示しました。

一つ目は魚類中の水銀の事例で、
水俣病患者の調査からのNOAELの決定、
そこから摂取量に換算してTWIを計算する方法、
さらに、魚類中濃度に換算して基準値を計算、
最後に生物濃縮係数から水中濃度の基準値を導出する、
という、一連のプロセスを示しました。
次に、現状の魚類中濃度を示し、基準値を超えている魚種について
摂食制限をすることで水銀摂取量がどれくらい減るかなどの試算を
示しました。

二つ目は放射性物質の管理についてで、
放射性ヨウ素やセシウムの暫定規制値の導出根拠や
現状の検出状況などを説明しました。

三つ目は水道水質基準の事例で
動物実験や、疫学調査、発がん性などから
水道水質基準値を導出する方法、
閾値の有り無しや不確実性係数についての説明を行い、
基準値を超えた水を飲んだ場合のリスクの計算方法
を示しました。

四つ目は水道水の感染症リスクと塩素消毒による消毒複製生物の
リスクトレードオフの事例で、
詳しくは昨年度の記事を参考にしてください。
http://shimana7.seesaa.net/article/164871442.html


パート3では、
DDTに始まる化学物質の生態リスクの歴史
生態リスク評価のフレームワークについて
生態系の何をどこまで守ればよいのか、という話
(先日の記事も参考に
http://shimana7.seesaa.net/article/226710688.html
室内毒性試験の手法、
不確実性係数とPNECの導出方法
個体群モデルやメソコスム試験などの高次評価法
水中濃度モニタリングやモデリングによる曝露評価
HQやMOEなどのリスク指標について
をざっくりと説明し、
農薬の生態リスク評価の手法
種の感受性分布を用いたリスクの定量化と
そのリスク管理への応用を示しました。


パート4では、
死亡率によるリスクランキングや、ARALAの原則などを説明し
リスク管理の原則論を話しました。
リスク管理の最適化の手法として、
架空のリスク管理オプション事例を示しながら
費用便益分析の手法を説明しました。

最後に外交問題とリスクの関係として、
リスクを根拠とする非関税障壁と貿易摩擦について説明し、
リスク評価の国際調和の必要性などを話しました。

posted by shimana7 at 22:27| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月19日

最近の状況


今年から始まった二つのプロジェクトを進めるに当たり
相変わらず急がしい最近ですが、
空き時間があればひたすら論文を書いています。

とりあえず今は自分の進路のことを最優先で考えねばならず、
年度末にせまったテニュア審査に向けて、
最後の悪あがきをしているところです。
(自分はしょせん期限付き雇用の身分だと再認識せざるをえなくなります)


例年この時期は科研費の申請など
来年にむけた研究費獲得の努力に勤しむことになります。
今年はプロジェクトがすでに動いているのでだいぶ楽させてもらってます。


イベントごとですが、
10月3日は筑波大での講義がありました。
これはまた後程紹介したいと思います。

10月4,5日と農業環境技術研究所で毎年行われる研究会
有機化学物質研究会と
農薬環境動態研究会に参加しました。

有機化学物質研究会ではレギュラトリーサイエンスをテーマとして、
産総研から小野恭子さんに規制科学について講演いただきました。
この講演はかなりの注目を集めたのではないかと思います。
陰ながらお手伝いしたのでうれしく思います。

農薬環境動態研究会では地域の農業、農薬に関するお悩み事を
いろいろ聞くことができました。
特に私が総説(もうじき公表)でも取り上げた
マイナー作物問題は本当に奥が深いです。
こういう話の中には研究のヒントがたくさん詰まっています。


最近になり、各種化学物質の基準値の設定根拠を話したりすることが増え、
それにともないレギュラトリーサイエンスあるいは
規制科学の議論をすることも増えました。
この方面でも面白いアウトプットが出せないかと考えています。

いろんな興味深い動きもあるので、形にすべくやっていきたいです。

特に、海外に向けてアピールすることは重要だなと考えています。
日本がどんな管理体制をとっているのか
欧米の専門家はほとんど知らないんですよね。


雑多な日記になりましたが、とりあえず近況ということで書いてみました。
posted by shimana7 at 21:49| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月07日

飛ばないリスク


GWは息子をつれての初の北海道帰省をしてきました。

飛行機は茨城空港‐千歳空港便を利用してみました。
何と言っても茨城空港はつくばから車で1時間、
駐車場は無料と、
小さい子供を連れて旅行するには大変便利!
と思っていました。。。

行きの日は天気も良く、道路も渋滞せずに
茨城空港までスムーズに着きました。
が、その日は風が強く、搭乗する飛行機が着陸できずにあっけなく欠航。
ここで茨城空港の弱点露呈です。
1日1便しかなく、ほかの交通の選択肢もないため、
欠航した時点でもうどうすることもできません。
羽田なら1便欠航してもほかにいろんな選択肢があります。
最悪東北新幹線で陸路でも行けます。
しかし、茨城空港は飛ばなかった時のリスクが大きすぎました。

結局当日夜の羽田‐千歳便が取れたため、
一旦家に帰り、羽田に向かって
夜、日が変わるころに実家に着くことができました。
帰りは茨城行きがダメでも羽田に飛べばよいわけですから
帰りの場合は飛ばないリスクはそれほど大きくないでしょう。

よっぽど時間に余裕がない限り茨城空港の利用は
(特に行きは)おススメできません。



実家の前から、まだまだ雪が残っています。
P1060529.JPG


実家の近所でダチョウを飼っています。
息子は餌をあげようとして手をつつかれましたがそれでも笑ってました。
P1060579.JPG


蝦夷富士羊蹄山は絶景ポイントですが雲がかかって残念。。。
P1060534.JPG


北海道といえば富良野や美瑛や旭山動物園、または道東だったりするのですが、
私は千歳からの(車での)アクセスも良いニセコ周辺を断然おススメします。

posted by shimana7 at 23:28| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月04日

NASAの発表


NASAの発表
ヒ素を利用して生存=新細菌、米国の塩湖で発見―地球外生命探索に影響も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101203-00000016-jij-soci

の、どこがすごいのか全然わからないヒト、
特に、極限環境微生物と地球外生命の関係が
さっぱり想像できないヒト、

ぜひぜひ長沼毅さんの本を読んで下さいね!

特に今年でた本
辺境生物探訪記 生命の本質を求めて (光文社新書)

は特にオススメです。
これまでの長沼さんの活動歴が一気に読めます。
科学っておもしれー!的な要素満載です。

ダイジェスト的にはこちらで読めます。
http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/deep_science/cafe/henkyou/



地球外で生命が誕生して、それが地球に降ってきたのが
生命の起源だとするのがパンスペルミア仮説。
宇宙から地球に降り注ぐ過程でも死なない生物の条件を探っていくと、
水を抜いて乾燥した状態で生きることができる
微生物だということになるそうです。
水を抜いた状態が宇宙での強い放射線に
一番耐えることができるようです。

地球上でそのような乾燥に強い微生物を探っていくと
砂漠などで水分が蒸発し、塩分が飽和する位に高くなった塩湖に
主に生息する好塩菌だということになります。

長沼さんはこの塩分の高い極限環境に適応した微生物が
なぜか地球上のどこにでも
普遍的に存在していることを発見しました。

今回発見されたヒ素を利用する生物もやはり
好塩菌の中の一つ「ハロモナス」でした。
こいつも高塩分や乾燥に強く、
しかも地球上に普遍的に存在します(深海底にも南極大陸にも!)。

なので、このNASAの発表は私にとっては
本当にびっくりすることだったのです。

ハロモナスの適応力はものすごく強くて
どんな環境にでも適応できるようです。
でも、まさか化学物質の毒性にまで
このように適応できるとはまさに驚くほかありません。



ちなみに私の修士論文のタイトルは
「新規に分離された好塩性古細菌の系統学的研究」
でした。そしてその序文は
-----
近年、深海底、地中、砂漠、宇宙など極限的な環境に生息する生命への関心が、新規の生物の発見とその応用への期待と共に高まってきている。
-----
という文章から始まります(なつかしいなあ)。



さらにちなみに長沼さんは現在第52次南極地域観測隊
に参加中だそうです。
http://www.nipr.ac.jp/jare/topics/index.html

ここの昭和基地NOWのページを見てると皆さん実に楽しそう。

posted by shimana7 at 00:44| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月07日

満開@農林団地

今年も農林研究団地の桜が満開の季節。

IMG_0532.JPG


この道をたどって職場へ向かうのは気持ち良いです。
研究所近辺に最も人が賑わうとき(笑)でもあります。

IMG_0537.JPG


圃場の菜の花も人気スポットの一つ。
年度の始まりを告げているかのようです。

4月は容赦なく会議だらけで花を見ている
余裕はあまりありませんが。。。

posted by shimana7 at 16:52| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月11日

ブログ引っ越し?


ドリコムブログのサービス終了が間近で、
ブログの引越し先を考えています。

当初「はてな」を第一候補に考えていたのですが、
研究者のブログはなぜ「はてな」が多いのか?

「注釈をつけられるところが
学術的っぽくて、
それがウケているのでは?」
という話を聞いて以来、
たしかにはてなの注釈が
非常にウザく感じてしまうように
なってしまいました。

ということで
はてなへの関心が一気に冷めていっています。

ブラウジングが
iphone用に最適化してくれる
seesaaブログとかも魅力的です。

iphoneで打つだけならツイッターで十分なのですが、
アメブロはiphone専用のアプリも出していて、
使い勝手も良さそうです。





ところで
3月末までのTO DOリストを作っていたら、
10項目あって、そのうち7つが
プレゼンの準備でした。。。

思えばこの一年ずっと
こんな調子だったような気がします。
どおりで研究が進んでいないわけだ。。。

同じプレゼンをなんどもやるのは
しゃくに障るという妙な根性から
常に新しいことを勉強して
入れ込もうとしてしまいます。
これが準備に時間がかかる原因。

そんなこんなで完全に
締切にdrivin'される生活が続いています。
こういう生活を以前最も嫌っていたハズなのですが、
いかんせん抱えている仕事が
増えすぎてしまいました。。。

とりあえず3月に5つのプレゼンが待っています、
頑張れ俺。

posted by shimana7 at 12:52| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする