2009年08月05日

ヤホーのニュース


ヤフーニュースの有機栽培に健康効果なし、
というニュースへのコメントが
あまりにもひどくてびっくりしました。

「とにかく農薬は毒は!毒入り野菜は食べたくない」
的なコメントばかりです。

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「有機」に健康効果なし=一般食品と栄養変わらず−英調査
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090730-00000016-jij-int 
【ロンドン時事】農薬や化学肥料の使用を減らして作られた有機食品の栄養は、一般的な食品とほぼ変わらず、取り立てて健康に好ましい効果をもたらすわけではない−。英食品基準庁が委託した調査報告が29日公表され、消費者が抱く有機食品の効能とは反する意外な結果が明らかになった。
 委託を受けたロンドン大学衛生熱帯医学大学院が、過去50年間に発表された文献を精査した。13の栄養素のうち、ビタミンCやカルシウムなど主要10栄養素では栽培方法によって大きな違いは出ないとの結果が得られたという。
 食品基準庁は調査結果について、「有機食品を食べるなという意味ではなく、食べたからといって健康面でより優れた効果が得られる証拠はないことを示している」と指摘している。 
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有害性の面で有機栽培にメリットがないことは
とうに決着の付いている話なのです。

そうすると今度は、
栄養面でメリットがある、
と有機振興派が主張しだしたので、
調査したらやっぱり効果が無かったというものです、

「有機栽培」は有機JAS認証を受けることで
表示をすることができます。
一方「無農薬」や「減農薬」という表示は
定義が難しいため禁止されています。

有機=無農薬と勘違いしている人がとても多いのですが、
有機でも指定されている農薬は使えます。

「減農薬」の表示は禁止ですが、
慣行よりも農薬使用回数を減らした場合
「特別栽培」という表示ができます。
このネーミングが最悪で、
「特別栽培」の意味を知っている人はほとんどいないと思います。


以下はリンクです。
どれも一読の価値ありです。
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安心!?食べ物情報
有機栽培について
http://food.kenji.ne.jp/review/review508.html

そろそろ無農薬/有機栽培野菜に対する盲信を見直してはどうか
http://d.hatena.ne.jp/LM-7/20080817/1218954695

食品安全情報blog
オーガニックについてのレビュー発表
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20090730#p6
●有機農産物には残留農薬が少ないから健康への悪影響が少ないという主張は残留農薬モニタリング結果によって既に何度も何度も否定されている

有機農産物からも残留農薬は検出される。頻度は多少通常農薬より少ない。しかし基準違反という尺度を用いれば圧倒的に有機農産物の基準違反の方が多い。有機では認められていないはずの農薬がしばしば検出されるから。健康影響に関してはどっちもほぼ影響なし。

ただし英国やヨーロッパの話。日本で怪しげな「資材」を使って「無農薬」と称している人たちの作るものについてはデータがないのでなんとも言えない。

うちの研究所に電話してきた人は農薬として認可されているもの以外を使えば「無農薬」だと主張していた。その人が害虫を殺すために使っていたのは毒性の強いストリキニーネ。使わないでくれと言っても無農薬ではそれが常識みたいなこと言ってた。

少なくとも有機JASですらない「無農薬」と勝手に主張しているモノについては信頼できない。

●通常農産物が有機より有害ではないと言われて有機推進団体が持ち出してきたのが栄養価が高いとか健康に良いとかいう主張。Soil Associationなどがここ数年それを宣伝文句にしてきた。

今回の報告書はそれを否定している。

●環境影響は食品の安全性とは違う問題なのでFSAは議論していない。

ただし有機農産物のほうが単位面積あたりの収穫量が少ないのは厳然たる事実。ジャガイモで収量半分というデータがある。原野を保護するのが環境保護なら耕作地を増やすのは当然環境負荷が高いということになる。

●英国におけるオーガニック食品のメリットの最後の砦は動物愛護とGM反対。

しかしながらオーガニックチキンやビーフや牛乳よりベジタリアンのほうが理論上は圧倒的に分がいい。

GM反対は宗教のようなものだから、例え栄養に優れ農薬使用量が少なく単位面積あたりの収量が多くて環境負荷が少なくても反対するのだろう。


posted by shimana7 at 22:42| 農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月05日

環境保全と食糧生産はトレードオフなのか?


最近の日本の農業をめぐる状況において、
「環境保全型農業によって、生産と環境のトレードオフからWin-Winへ」
というようなスローガンが聞こえてきます。

ところで、そもそも環境保全と食糧生産は本当にトレードオフなのかどうか、疑問に思っています。そもそもの問題設定が間違っているとしたら、その対策も間違ってしまいます。



肥料や農薬を大量投入して収量を高める集約的農業によって、農地から生き物が消えた、というのが、問題提起の発端でしょう。

農業とは単一の生物(作物)を超高密度で生育させるために、他の生物を排除させることなので、単位面積当たりの収量を上げることと生物多様性とは基本的に矛盾します。

そこで、農薬などを減らせば生物は増えるが、収量は落ちる、という事実があり、
この辺りから「生産と環境はトレードオフである」という論が登場します。

自分としてはどうもこの意見に納得がいかない、収量を減らせば生産量を維持するために農地の必要量が増え、農地の開墾によって生態系が破壊される、そっちの影響の方がよっぽど大きいだろう、
と思っていたのです。

個別の農地にとどまらず全体像を議論すると、やはりそのようなところに落ち着くようです。



林清忠 (2006) 農業生産システムの環境影響評価 -ORとLCA-, オペレーションズリサーチ, 2006年5月号, 268-273、によると、
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多くの土地を必要とする粗放的農業(有機農業を含む)と集約的農業とどちらが環境への負荷が小さいのか。
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単位土地面積あたりでは有機生産の環境影響が小さいが、単位生産物あたりでは慣行生産の環境影響が小さい。食糧需要の増大を考慮すれば、単位生産量辺りの環境影響が小さい生産システムの方を採用した方が、社会全体の環境影響は小さくなる。
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事業規模が大きいほど、エネルギー利用効率がよいので環境影響も相対的に小さい。これは地産地消の環境影響が小さいとは限らないことを意味する。
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となっており、集約的農業をするのがトータルの環境影響を最小化できるということは、そもそものトレードオフ関係が崩れることを意味します。
この論文の環境影響はLCA的な評価ですが、生態影響を抜き取ってもおそらく同様になるでしょう。



では、収量が減っても生物を増やそうとする農業を行う意味とはいったい何なのでしょうか?



それは地域特性への配慮である、と考えるのがしっくりくるかなと思います。
生物の分布は地域特異性が大きいので、トータルの影響を最小化するだけでは地域個有の生き物を守れない可能性があります。
また、生き物いっぱいの農村や昔懐かしい農村景観は、農産物に付加価値を与え、その地域にとっては大きな売り物になる可能性があります。

つまり、生産の集約度のバランスをどこでとるかは、その土地の条件や利用形態、周辺の生物の生息状況などに依存し、何を売りものにするのか、という農業の経営戦略にも依存すると思います。

このようにいわゆる環境保全型農業は、地域によっては有効になる可能性もあります。
この場合、何を守るのか、というゴールが具体的である必要があるでしょう。

しかし多くの場合、地域振興、町おこし、ビジネスチャンスにはなっても、決してトータル的には環境保全にはならない、ということを意識する必要はあるかと思います。農地を増やすことは環境影響を増大させます。

また、生産と環境のトレードオフを前提とした対策は、方向を見誤る危険性があることも注意が必要でしょう。



このような議論には、環境影響と食糧生産の関係の定量的な解析が欠かせません。
今自分の研究として行っている、農薬使用によるリスクの定量化もこのような議論に役に立つはずです。
posted by shimana7 at 00:57| 農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月02日

農作業のリスク


農水省の資料:
平成19年の農作業中死亡事故について
http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/sien/090428.html

によると、農作業中の事故により毎年400名程度の方が亡くなっています。

多くはトラクターなどの農業機械による事故が多く、7割程度を占めています。
農薬使用による死亡者は5年間で10名、年平均2名となっています。
この年間死亡数をリスクとすると、蛇にかまれたり、蜂に刺されて亡くなるリスクが同程度となっています。
家畜にけられたりして亡くなるリスクの方が若干高い。
稲ワラ焼却中のやけどや、溺死(ため池などで?)のリスクは農薬のリスクよりも10倍くらい高い。


農薬は作業者に対する健康影響も大きいというのが世間のイメージです。
農薬散布の際には保護衣などによって農薬から防護する必要があり、これを守る限り作業者への健康被害は抑えることができます。
顔、手足には皮膚保護クリームを塗り、保護衣、マスク、保護めがね、ゴム手袋、ゴム長靴でほぼ全身を保護する必要があります。

しかし、作業者が慣れてくると、これが暑いし面倒になり、大丈夫と思ってしまいがちで、現場では十分な防護が行われないことも多いのです。
過度に恐れてもいけないし、怖がらなさすぎもいけないし、適切に怖がる、ということが必要です。

農薬中毒の原因別統計では、防備の不十分が上位を占めています。
作業中以外の農薬中毒死の原因では、泥酔して誤飲誤食なんてのも毎年のように報告されています。

酒は怖い。

posted by shimana7 at 21:29| 農業 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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