2013年03月21日

EPAの試験ガイドライン改訂


先週は農薬学会@筑波大学でした。
自分の発表についてはまた後日まとめてみたいと思っています。

ところで学会の中で知ったのですが、
米国EPAの化学物質の試験ガイドラインが去年改訂されていたようです。
以前はOPPTSのガイドラインといっていたものが、
OCSPP: Office of Chemical Safety and Pollution Prevention
のガイドライン、に変わったようです。

生態影響関係は
Series 850 - Ecological Effects Test Guidelines
http://www.epa.gov/ocspp/pubs/frs/publications/Test_Guidelines/series850.htm
にあります。



藻類の試験ガイドラインは真核藻類(緑藻と珪藻)のものと
シアノバクテリアのものに分かれました。

850.4500 - Algal Toxicity (June 2012)
Document ID: EPA-HQ-OPPT-2009-0154-0003

850.4550 - Cyanobacteria (Anabaena flos-aquae) Toxicity (June 2012)
Document ID: EPA-HQ-OPPT-2009-0154-0004

試験条件などの違いによるものだと思いますが、
OECDテストガイドライン201では、
一つのガイドラインでこれらをカバーできているので
わざわざ分ける意味があるのかなあ?とは思います。
(実際文章は両者でほとんど同じです。)


EC50のほかに、NOECも計算するようになっていますが、
NOECの代替としてはEC5を計算するようになっています。
結構厳しい値になりそうですね。
(物質によってはほかのECxを使うこともあるみたいですが・・・)

ガイドライン中の表現ではEC50, EC5ではなく、IC50, IC05となっており、
ミジンコなどの影響のエンドポイント(ECx)に対して、
藻類の増殖速度の場合はICxと表現するように変えています。
このような用語の転換の意味として、
おそらくこれらのエンドポイントは明確に違うことを強調したいのだと思います。



ウキクサの試験ガイドラインでは、
従来の試験期間14日が7日に短縮され、
OECDガイドラインと同じになりました。
14日と7日では結果に大きな違いはないようです。

850.4400 - Aquatic Plant Toxicity Test Using Lemna spp. (June 2012)
Docket ID: EPA-HQ-OPPT-2009-0154-0027

posted by shimana7 at 23:30| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月18日

Rで濃度反応関係 〜drcパッケージ編〜


今回も統計の話です。

以前書いた記事
Rで濃度反応関係
http://shimana7.seesaa.net/article/172116752.html

Rで濃度反応関係 〜MCMC版〜
http://shimana7.seesaa.net/article/267132804.html
に、EC50等の計算方法を求めて検索して来られる方が多いので、
またもや懲りずに書いて見ます。

今回使用するのはdrcパッケージです。
これもとても簡単に使えます。
ただし、Rにデフォルトでは入っていませんので、
追加でインストールする必要があります。

drcパッケージについて:
drc: Analysis of dose-response curves
http://cran.r-project.org/web/packages/drc/index.html

drcの作者による論文:
Christian Ritz (2010)
TOWARD A UNIFIED APPROACH TO DOSE-RESPONSE MODELING IN ECOTOXICOLOGY
Environmental Toxicology and Chemistry, 29, 220-229



以下は計算過程です:

Rでdrcパッケージを読み込みます。
-----
> library(drc)
要求されたパッケージ alr3 をロード中です
要求されたパッケージ car をロード中です
要求されたパッケージ MASS をロード中です
要求されたパッケージ nnet をロード中です

次のパッケージを付け加えます: '‘alr3’'

The following object(s) are masked from ‘package:MASS’:

forbes

要求されたパッケージ gtools をロード中です

次のパッケージを付け加えます: '‘gtools’'

The following object(s) are masked from ‘package:car’:

logit

要求されたパッケージ lattice をロード中です
要求されたパッケージ magic をロード中です
要求されたパッケージ abind をロード中です
要求されたパッケージ nlme をロード中です
要求されたパッケージ plotrix をロード中です
要求されたパッケージ stats4 をロード中です

'drc' has been loaded.

Please cite R and 'drc' if used for a publication,
for references type 'citation()' and 'citation('drc')'.


次のパッケージを付け加えます: '‘drc’'

The following object(s) are masked from ‘package:stats’:

getInitial

警告メッセージ:
1: パッケージ '‘drc’' はバージョン 2.15.2 の R の下で造られました
2: パッケージ '‘magic’' はバージョン 2.15.2 の R の下で造られました
-----
Rのバージョンが古いので警告を受けましたがそのまま続けます。

使用する濃度反応関係のデータはまた同じです。
-----
> ###データ整理###
> res <- c(0.963, 0.925, 0.736, 0.300, 0.174, 0.062)
> conc <- c(30, 60, 120, 240, 480, 960)
>
> Obs <- data.frame(x=conc, y=res)
> Obs
x y
1 30 0.963
2 60 0.925
3 120 0.736
4 240 0.300
5 480 0.174
6 960 0.062
-----
concは被験物質濃度、resはコントロール区の増殖速度で割った比増殖速度です。

これを2パラメータのlog-logistic式にフィッティングさせます。
logEC50をパラメータとするlog-logistic式は:
res = 1/(1 + exp(-a*logEC50+a*log(conc)))・・・(1)
で表現されます。

drcパッケージでは、drmという関数を使います。
"LL.2()"というのが2パラメータのlog-lostic式を表しています。
3パラメータなら"LL.3()"、ワイブル式なら"W1.2()", "W2.2()"などとなります。

drc作者による論文(ETC 2010)を読むと、
毒性試験の解析はlog-logisticとワイブル2種類でやっておけば、
まず大丈夫なのかな、という感じを持ちます。

-----
> # 2パラメータのlog-logistic(LL)でfitting
> P <- drm(res~conc, data=Obs, fct=LL.2())
> summary(P)

Model fitted: Log-logistic (ED50 as parameter) with lower limit at 0 and upper limit at 1 (2 parms)

Parameter estimates:

Estimate Std. Error t-value p-value
b:(Intercept) 2.08641 0.28847 7.23260 0.0019
e:(Intercept) 182.41863 12.37472 14.74123 0.0001

Residual standard error:

0.04808593 (4 degrees of freedom)

-----
ここで、b = 2.08641, e = 182.41863
とパラメータが推定されました。
bが(1)式のa、eが(1)式のEC50に相当します。

初期値の設定なども何も必要なく、
データと関数形さえ指定すれば計算できてしまいます。
初期値の設定などは中でどうやってるんですかね???
(ちなみに初期値に何を入れたらよいか?
を初学者に説明するのは結構メンドイんで助かりますが。。。)

次に、このパラメータを用いてEC10, EC50, EC90を計算してみます。
drcパッケージにはEDという関数があり、簡単に計算できます。
-----
> #EC10, 50, 90の計算
> ED(P, c(10, 50, 90))

Estimated effective doses

Estimate Std. Error
1:10 63.637 9.7827
1:50 182.419 12.3747
1:90 522.914 87.4597
-----
EC10は63、EC50は182、EC90は523と計算されました。
これもとっても簡単で、
中で一体どんな計算をしているのか大変興味があります。

さらに、EDという関数は信頼区間の計算もしてくれます。
(もともと標準誤差(Std. Error, SE)の値が出ているので、
ECx ± t値*SEで簡単に計算できますが。。。)

先ほどのEDに、"interval = "delta"を付け加えます。
-----
> #EC10, 50, 90とその信頼区間の計算
> ED(P, c(10, 50, 90), interval = "delta")

Estimated effective doses
(Delta method-based confidence interval(s))

Estimate Std. Error Lower Upper
1:10 63.6368 9.7827 36.4757 90.798
1:50 182.4186 12.3747 148.0609 216.776
1:90 522.9137 87.4597 280.0865 765.741
-----
LowerとUpperという列が追加されました。
これが95%信頼区間の下限と上限です。
これより、EC50の信頼区間は148-217と計算されました。

モデルの当てはめ具合はグラフを書いて確かめます。
-----
> plot(P, broken=TRUE)
drc.png
-----

ということで、とても簡単に濃度反応関係の解析ができるようです。

posted by shimana7 at 23:27| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月09日

米国EPAのFIFRA-SAPにおける農薬の生態リスク評価方法の議論


農薬の生態リスク評価に関わる方は必読といってもよいかもしれない
貴重な資料が米国で公開されています。
(もう1年くらい経ってますけど。。。)
僕自身大変勉強になったので、ここで紹介してみたいと思います。


米国の農薬取締法
(The Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act, FIFRA)の
科学助言パネル(Scientific Advisory Panel, SAP)の
ミーティング(FIFRA-SAP)が
2012年1月31日から2月2日まで開催されました。

そのテーマは、
"Comparative Effects Methodology Developed by the Office of Pesticide Programs and the Office of Water"
となっており、
FIFRAにおける農薬登録と、
Clean Water Act(CWA, 日本でいえば環境基本法の水部分?)
に基づく水質環境基準策定における、
生態影響評価法について議論された模様です。

水質環境基準は47物質について定められていますが、
そのうち農薬は16物質を占めています。
一方、登録農薬は1000を超えていますが、
そのうちのほとんどについて
水質環境基準を策定するだけのデータが不足しています。

農薬登録審査においては魚類、無脊椎動物、植物について
リスク評価を行っているものの、
群集レベルの評価法にはなっていません。
(つまり、指標生物種のみに対するリスク評価を行っている、
という解釈になっているようで、
この辺は深く掘り下げると結構面白いかも)


このFIFRA-SAPミーティングでは、
以下の6つの事項について
EPAが事前に整理した情報に基づいて具体的な議論が行われました。
1. 急性毒性の予測ツールとしてのQSARの活用
2. 同じく急性毒性の予測ツールとしてのInterspecies Correlation Estimates(ICE)モデルの活用
3. 水生動物の毒性データからHC5を導出するためのSSDの解析手法
4. 少ないデータからHC5を推定するための外挿係数(Extrapolation Factor, EF)について
5. 急性毒性とそのHC5から、慢性毒性とそのHC5を予測するための急性慢性毒性比(Acute Chronic Ratio, ACR)について
6. 水生植物のHC5の推定について

以上の議題を見る限り、
EPAはSSDの活用をさらに推進しようとしているっぽいですね。

農薬の場合、多くの物質でSSD解析に十分なデータが不足しており、
さらに毒性データの数が物質毎にバラバラとなっています。
このような場合の横並びで評価できる手法が
必要となってきていることから、
QSARやICEの活用が検討されています(議題1と2)。

米国における水質環境基準の策定においては、
1985年に公表されたガイドライン
"Guidelines for deriving numerical national water quality criteria for the protection of aquatic organisms and their uses"
(以下、85年ガイドライン)において、
三角分布を仮定したSSDによって基準値を導出することが定められています。
ただし、この85年ガイドラインでは
SSDやHC5といった用語は使用されていません。
その後EUの方で発展した、対数正規分布に基づくSSDからHC5を推定する、
という手法により近づいた形となっています。
(議題3のところで改めて様々なSSD解析法について精査しています)

また、除草剤など植物に特異的に毒性が高い物質について、
これまで水生植物のデータを用いたSSD解析の例が少なく、
この部分も手法的な検討が必要となっています(議題7)。


さらに、全体を通して特徴的な点は、
農薬の作用機作の情報を活用した評価手法の検討に力を入れていることです。
例えば、作用機作毎にQSARやICEモデルを構築する、
デフォルト値に加えて、作用機作特異的なEFやACRを設定する、
などです。


EPAが事前に整理した情報(White paperと呼ばれている)は、
Docket number: EPA-HQ-OPP-2011-0898-0005により公開されています。
各議題を深く掘り下げたAppendixA〜F(それぞれ議題1〜6に対応)もあります。
また、ミーティングでの議論の内容は
Docket number: EPA-HQ-OPP-2011-0898-0027により公開されています。
"Regulation.gov"というWebサイト:
http://www.regulations.gov/#!home;tab=search
で、Docket numberを入力することによりPDFファイルがダウンロードできます。


議論の内容がとにかくメチャクチャ(マニアックで)面白いです。
これを読むと米国での最新の動向がわかります。
これについてもまた今度(余裕が出てきたら)紹介できればと思っています。

posted by shimana7 at 23:07| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月21日

藻類試験の解析方法:農薬学会2013


日本農薬学会大会2013 in つくばでは
「藻類生長阻害試験の統計解析方法:RExcelで行う非線形回帰分析」
というタイトルで発表してみることにしました。
統計解析方法そのものをテーマに発表するのは今回初めてですが、
試行錯誤的にやってみたいと思います。


話す内容としては、
OECDテストガイドライン201の藻類試験の統計解析方法の解説、
NOECよりもECxへの切り替えが推奨される理由
などを話してから、

RExcelを使っての、log-logitモデルへの非線形回帰の方法の説明を行い、

さらにいくつかの実試験データを用いて、
従来のprobit法と非線形回帰法の結果を並行して行い、
EC50同士や、NOECとEC10の比較をやってみる、
という流れを考えています。



藻類試験データの解析法としては
以下の4段階くらいのステップがあるだろうと考えています。

藻類試験の解析.png

今回の発表で話すのは図中の1、
つまり一番初歩的な段階だけになります。
誤差分布は正規分布を仮定し、
藻類の増殖や毒性の発現は試験期間内で直線的に変化をする
というモデルを考えます。
実用的にはこれができればとりあえずは十分だと思います。

図中の2が必要になる場面は実用的には少ないです。
1のやり方でパラメータが発散してしまう場合でも
2のやり方でうまくいくこともあります。

被験物質が試験期間内に分解が進んで毒性が徐々に弱くなる場合や
逆に分解代謝物による毒性が出てきて毒性が徐々に強くなる場合など、
試験期間内に毒性の連続的な変化が起きる場合に、
図中の3や4の方法が有効になります。
この辺はまたどこか違う場所で発表してみたいです。
posted by shimana7 at 23:15| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月08日

今年の活動:統計編


2012年もいろいろな方にブログのアクセスを頂きました。
定期的に見ていただいている方には大変感謝です。

さて、去年一年でどんな記事がアクセスが多いのか、
どういう検索ワードで飛んできているか、
などを見てみますと、
圧倒的に藻類の統計解析関係の記事にアクセスが集まっています。
検索ワードは
「RExcel」「R」「EC50」「Excel」「信頼区間」
などの組み合わせで飛んで来られる方が非常に多かったです。

業務の方でもルーチンで大量の藻類試験データを解析していますし、
試験データの解析方法のコンサルをする機会も増えてきました。

そんなわけで今年はこの辺のところを本格的にやるつもりです。


去年もいろいろコンサルした経験からは、
・Rを使ってもらう敷居はべらぼうに高い(というかほとんど無理)、
・エクセルベースでできない方法は普及しない
ということはほぼ確実に言えます。

そのソリューションはRExcelということになるんだろうな、
というのが現時点での到達点です。
(以前は微妙。。。と思ってましたけど)

RExcelなら、自分が普段ルーチンで使っているRプログラムを
そのまま流用できますし、
Excelシート作成の工夫次第で、使い勝手もだいぶ良くなることがわかりました。
なによりも、フリーのアドインソフトを入れるだけなので、
導入の敷居が最も低い、というところが利点ですね。


とりあえずの最初のステップとしてのゴールは、
OECDのテストガイドライン201 (藻類成長阻害試験)の2006年版に準拠して、
2パラメータのロジットもしくはワイブルモデルに非線形回帰で当てはめて、
EC50とEC10とその信頼区間を計算する、
というところまでをできるようになることです。

ここまでをRExcelでできるようになれば、
大きく底上げができると思います。

最初からあまり高望みをしてもしょうがないので、
その先のことはまたちょっとずつできればと思います。



ExcelでR自由自在
http://www.amazon.co.jp/Excel%E3%81%A7R%E8%87%AA%E7%94%B1%E8%87%AA%E5%9C%A8-R-M-%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%BC/dp/4621061550/ref=dp_ob_title_bk
の冒頭文を最後に紹介します。
「いいかげんに目を覚ませ。
世界で最も使われている統計ソフトは"Excel"である」
posted by shimana7 at 11:48| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月21日

中国での水質基準値策定を巡る状況


水生生物保全のため水質基準値(water quality criteria, WQC)の導出方法として、
欧米各国、豪州などが種の感受性分布(SSD)をとり入れてきているところですが、
アフリカでも活用が進んでいるようですし、
最近は中国でも活用を進めているようです。


Wu FC, Meng W, Zhao XL, Li HX, Zhang RQ, Liao HQ (2010) China embarking on development of its own national water quality criteria system. Environ Sci Technol Viewpoint 44(21):7992-7993
http://dx.doi.org/10.1021/es1029365

これからWQCつくるのにいろいろ取り組んでいますよ、という文章。


Wu FC, Feng CL, Zhang RQ, Li YS, Du DY (2012) Derivation of water quality criteria for representative water-body pollutants in China. Science China Earth Sciences 55(6): 900-906
http://dx.doi.org/10.1007/s11430-012-4424-1

4つの物質についての具体的なWQCの提案。SSDを使って導出しています。

9月のSETAC Asia/Pacificでも、
この辺の中国でのSSD活用をめぐる興味深い発表はいくつかありました。


Feng CL, Wu FC, Zheng B, Meng W, Paquin PR, Wu KB (2012) Biotic Ligand Models for Metals - A Practical Application in the Revision of Water Quality Standards in China. Environ Sci Technol Viewpoint 46(20):10877-10878
http://dx.doi.org/10.1021/es303500n

金属についてはBioavailabilityを考慮したBiotic Ligand Model(BLM)
を用いて水質に応じたWQCの策定を目指すそうです。
(そんなにすぐには導入できないだろうみたいな但し書きもありますが)


Environmental Science & Technology誌のViewpointというのが
どれくらい読まれているのか知りませんが、
(僕は全然読みません)
日本の状況などもこうやって国際社会に発信しといたほうがよいのかもしれません。
(こんなに遅れてます、的な愚痴になるかもしれませんが。。。)
posted by shimana7 at 22:41| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月26日

有機研究会資料


11月1日に開催された、第12回有機化学物質研究会
の資料をアップしました。

農薬生態毒性データベースの構築とその活用
〜種レベルと群集レベルの評価をつなぐ〜
http://shimana7.web.fc2.com/research/PDF/g3-13.pdf

生態毒性データベースという切り口でまとまった文章
というのもあまり見かけなかったもので、
総説として通用するくらいのものを書こうと意気込んで書きました。

将来的にいろいろ付け加えて総説化するかもしれませんが、
せっかく書いたものなのでとりあえず公開してみることにします。


さて、この研究会ですが、
僕の場合、研究成果アピールというよりも
一つでも「いいこと聞いた」と思ってもらえればとプレゼンしましたが
いかがだったのでしょうかね。

遺伝子から生態系までの生態影響の専門家が集う場
というのはやはり現状ほとんどない、ということはよくわかりました。
でもってこのような場を定期的に設けて情報交換することは
大切だなあと思いました。

トキシコゲノミクスはまだ全然ついていけてないのですが、
進歩がすざましく早いですし、
こちらからレギュラトリ―な方向性での活用のアイディアとか
出してあげるとコラボもできるかもしれませんね。
posted by shimana7 at 23:04| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月19日

カビを使った毒性試験


カビを使った毒性試験で良い方法はないものか、
と探していたところ偶然見つけた資料が
なかなか面白かったのでご紹介。

繊維分野における標準化に関する取り組み - 経済産業省
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225b07j.pdf

一見「カビを使った毒性試験」とは何の関係もなさそうなタイトルですが、
いわゆる「抗菌グッズ」の一種としての抗菌加工繊維の抗菌性を定量的に評価して、
それを規格化&国際標準化してしまおう、という動きがあるようなのです。

この、日本で開発された繊維製品の抗菌性試験方法と抗カビ性試験方法は
日本発の国際規格化に成功した事例だということです。
要は「ルールを作った奴が勝つ」、というやつです。


では、新規抗カビ性試験方法の内容を見てみると、
「世界初の発光測定法(ATP法)を活用した抗かび性定量試験法」
ということで、4種類のカビが試験生物種として選定されており、
この中から二種類以上を選んで試験をする、
エンドポイントはATP活性の阻害を見る、
という試験になっています。

ATP活性は生菌数の指標となるので、
バイオマスの増加だけではなくて生理状態も反映した影響評価になります。
また、ATP活性の測定はキット化されているので
寒天培地でコロニーを数えたりするクラシカルな方法に比べると、
はるかにハイスループットな試験系にできます。


で、そもそもなぜカビを使った毒性試験方法などを調べているのか、というと
農薬の中でも殺菌剤のターゲットは主に菌類ですから、
現行の魚類、甲殻類、藻類の試験では
生態影響をうまく評価しきれないかもしれないからです。

追加で試験をやるとしたらカビになるわけですが、
カビを使った毒性試験の例はほとんどなく、
ここが最後に抜け落ちた穴ではないかと思っているからです。


殺菌剤だけでなく、化学物質(特にPPCP)でも
なんとなくその穴が重要そうなのはわかっているのですが、
あまり取り組みが進んでなかったような気がします。

ところが「繊維分野における標準化」という全くの他分野で
いろいろ進んでいたのは結構驚きでした。
今後も注目してみたいです。

posted by shimana7 at 23:21| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月28日

忙しい近況


お久しぶりです。
すでにSETAC in 熊本の出張から一か月も経っていることに驚きです。
目まぐるしく日々が過ぎていっていますが、
ここ最近の近況でも書いてみます。

・9月25-27日にSETAC Asia/Pacific in 熊本でポスター発表
 いろいろ盛況でした。

・すぐに9月29日は静岡県立大学での社会人向け講座の講師

・7月に行ってきたWorld Congress on Risk in シドニーの発表原稿書き
 (そのうち日本リスク研究学会のWEBサイトで公表されるようです)

・10月15日は所内セミナーを、除草剤の生態影響評価についてをテーマにして開催。
 植物と藻類を用いた新たな評価手法について勉強。

・10月22日は筑波大での修士留学生向け英語の講義。


研究ではとにかく外部予算もらっているプロジェクトを進めないといけません。
藻類の毒性試験はここのところすっとルーチン的に動いていて、
ゴリゴリとデータが出てきています。

さらに、GISを用いて農薬の高濃度河川(モニタリング候補地点)
を特定するためのいろんな解析もやっていました。
やってみると結構おもしろい結果が出てくるものです。


明日以降も目白押しです。

・さっそく29日はMARCOシンポジウム
 (モンスーンアジアにおける食品中ヒ素およびカドミウム汚染に対するリスク低減技術)
 でポスター発表
 http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/sympo/h24/20121029.html

・11月1日は有機化学物質研究会で講演
 http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/sympo/h24/20121101.html

・11月9-11日は日本リスク研究学会の大会、特に9日は若手ワークショップです。
 http://www.sra-japan.jp/SRAJ2012HP/indexjp.htm
 今年はプログラムを見た限りかなり面白そうです。

posted by shimana7 at 23:02| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月03日

生態毒性データベースの活用


11月1日の有機化学物質研究会
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/sympo/h24/20121101.html
のための、発表原稿を作成していましたが、
改めて生態毒性データベースの活用について勉強してみました。
これが案外非常に良い機会となり、かなり勉強になりました。

活用の方向は大きく二つに分けられて、
生態リスク評価への活用と
毒性予測手法確立のためのデータセットとしての活用
があると思います。


生態リスク評価では、
・不確実性係数(種間外挿、急性-慢性外挿)の設定、妥当性の検証
・TTC(毒性学的懸念の閾値):物質ごとの影響濃度の分布解析
・SSD(種の感受性分布):種ごとの影響濃度の分布解析
などの活用があります。

TTCも今回いろいろ文献を読んで勉強してみて、
これはSSDとほとんど同じ考え方なんだということがよくわかりました。
データベースさえ持っていれば簡単にいろんな解析ができそうです。


各種毒性予測手法では、
・QSAR:物性から毒性を予測
・ICE:二種間の感受性の相関関係から他種の毒性を予測
・Trait-based:種毎の生活史形質から毒性を予測
などの活用があります。
予測式を作るためのデータセットとして毒性データベースが必要になります。


それと、これらの各種活用方法は、
工業用途の一般化学物質と農薬とでは考え方はほぼ同じものの、
全く同じには適用することができない、
ということも大体わかりました。

上記の活用方法は多くが一般化学物質が対象ですが、
農薬に適用しようとする場合、
農薬の作用帰作毎にグルーピングして、その中で解析することが重要です。

posted by shimana7 at 22:35| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする