2015年09月20日

EUにおける農薬水域生態リスク評価の新ガイダンスの根拠論文


タイトルまんまなのですが、かなりの重要文献です。

RPA van Wijngaarden, L Maltby, TCM Brock (2015)
Acute tier-1 and tier-2 effect assessment approaches in the EFSA Aquatic Guidance Document: are they sufficiently protective for insecticides?
Pest Manag Sci, 71, 1059-1067

EUでは2013年に農薬水域生態リスク評価の新ガイダンスを公表しました
Guidance on tiered risk assessment for plant protection products for aquatic organisms in edge-of-field surface waters
EFSA Journal 2013;11(7):3290

そこでは、
Tier-1: 標準試験生物種の毒性データによる評価
Tier-2: 追加試験データを用いた評価(種の感受性分布, SSD含む)
Tier-3: メソコスム試験による評価
という主に三段階の評価が採用されています。

でもって、いろんな不確実性係数が導入されており、
SSDを使う場合、HC5を不確実性係数3〜6で割ることとなっています。
上記の論文はその不確実性係数の根拠が示されています。

まずメソコスム試験による無影響濃度を「真の」無影響濃度(NOECeco)だと見なします。
(その是非はとりあえずおいといて、、、)
HC5とNOECecoは大変キレイな直線関係にありますが、
さらにHC5を3〜6で割ることで、
HC5の方がほとんどの場合に安全側の評価値になるというわけです。



これで、新ガイダンスにかかわる論文は三つめになります。
ほかの二つは以下のとおりです:
(なんか3つとも雑誌の選択間違っている気がしますが。。。)

TCM Brock, RPA van Wijngaarden (2012)
Acute toxicity tests with Daphnia magna, Americamysis bahia, Chironomus riparius and Gammarus pulex and implications of new EU requirements for the aquatic effect assessment of insecticides
Environ Sci Pollut Res, 19, 3610-3618
上記の論文はこれの続きのようになっています。

TCM Brock, M Hammers-Wirtz, U Hommen, TG Preuss, HT Ratte, I Roessink, T Strauss, PJ Van den Brink (2015)
The minimum detectable difference (MDD) and the interpretation of treatment-related effects of pesticides in experimental ecosystems
Environ Sci Pollut Res, 22, 1160-1174
こちらはTier-3のメソコスム試験の解析方法を記したものです。
これからはPRCではなくMDDです。



ここから余談。。。
余談1:上記の3論文の著者を見ればわかりますが、
このEU新ガイダンスの影響評価のパートは
ほとんどBrock氏一人で決めたのではないか?という気がします。
新ガイダンスの解説などもほとんどこの人がやっています。
この辺の権力関係がどうなっているのが大変興味深いです。

余談2:
このEUの新ガイダンスにより、
メソコスム試験に厳格な妥当性基準が設定され、
従来あったメソコスム試験のデータは
ほとんどが妥当性基準を満たせずに却下されることになりました。

すなわち、上記の論文で「真の」無影響濃度とされているデータも、
(実際にひとつひとつ調べたわけでは無いが)
ほとんどが新ガイダンスにおいては
却下されてしまうデータだということになります。

この辺にいろいろ矛盾している部分もあるわけですが、
現時点で新基準を満たすメスコスム試験データは
ほとんど存在していないわけですから、
まあまあしょうがないよね、というのも現実的な考えかと思います。
posted by shimana7 at 23:06| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする