重要な告知とは本の出版についてです。
いよいよ今週発売となりました。
講談社ブルーバックス
「基準値のからくり〜安全はこうして数字になった〜」
村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生 著
税込み994円です。
http://www.amazon.co.jp/dp/4062578689/ref=cm_sw_r_tw_dp_WG1Mtb03D9WW0
安全に関する本としては、類を見ない面白い本になったと思います!
この本は巷に良くある、
〇〇は安全か危険か、ということを論じた本ではありません。
私たちの安全を守る基準値というものは
いったいどんな風に決まっているのか?
その根拠を探ってみると、それは純粋に驚きの連続であって、
知的好奇心をビリビリ刺激する新しい世界が広がっていた!
という本なのです。
例えば、お酒はなぜ20歳からなのか?
大人よりも子供の方がアルコールの害が
出やすいことは科学的に知られています。
でもそれだけでは、
なぜ19歳でも21歳でもなく20歳なのか?
は説明できませんよね?
(実際に国によって、飲酒開始年齢はバラツキがあります)
その根拠を知った時にはきっと驚くはずです。
本の帯には
「複雑怪奇な数値の根拠に、4人の基準値オタクが斬り込む!」
と書いてあるように、
事実は小説より奇なりな世界を味わってください。
本は以下の10章構成です。
それぞれ完結していますので、
興味のあるところから読むことができます。
第1章 消費期限と賞味期限 〜「おいしさ」の基準値の「おかしさ」〜。
第2章 食文化と基準値 〜基準値やめますか?日本人やめますか?〜。
第3章 水道水の基準値 〜断水すべきか? それが問題だ〜。
第4章 放射性物質の基準値 〜「暫定規制値」とは何だったのか〜。
第5章 古典的な決め方の基準値 〜「リスクとは無関係」な基準値がある〜。
第6章 大気汚染の基準値 〜「PM2・5」をめぐる舞台裏〜。
第7章 原発事故「避難と除染」の基準値 〜「安全側」でさえあればいいのか?〜。
第8章 生態系保全の基準値 〜人間の都合で決まる「何を守るか」〜。
第9章 危険物からの距離の基準値 〜「電車内の携帯電話」から水素スタンドまで〜。
第10章 交通安全の基準値 〜「年間4000人」は受け入れられるリスクか〜。
基準値の根拠についての本ですが、
やはり取りあげる基準値は安全に係わるものなので、
安全とは何か?
という深いテーマにも踏み込んでいます。
この本では、従来から日本で流されている
「安全は科学的・客観的に決まるものだが、安心は心理的なもの」
という安全安心二分法に異議を唱えます。
安全とは「受け入れられないリスクの無い状態」
という国際標準の定義を採用しています。
あるリスクが受け入れられるかどうかは、
リスクの大きさだけでは無く、
社会的、倫理的、心理的な要素をふんだんに含んでいます。
この「受け入れられるリスクの大きさ」と
基準値の関係も考察しています。
と、ここまで書くとかなりお腹いっぱい感が出てきます。
一般向けの本なので、
上記の点はそこまで深く論じているわけではありません。
本として面白いのは、コラムをたくさん入れた点です。
3秒ルールはなぜ3秒?というような脱力系のコラムもあり、
読み物として楽しいものになっているはずです。
そして、知ったら誰かに話したくなる、
そんな話題がいっぱいです。
そして、読み物として面白い本としながらも、
基本的な環境リスク学の知識
(NOAELや不確実性係数、ADI、曝露マージン、線形閾値無しモデル、ALARAの原則など)も詰め込まれていますので、
リスク学の入門書としてもお薦めです。
リスクの科学って面白い!と思って貰えたら嬉しいです。