2014年02月23日

実験画像の管理


論文に使う実験画像についての話題が最近結構出ていますが、
ほとんどが
・若手への倫理教育(なぜ若手だけ?)
・画像捏造のテクニックとその見分け方
みたいな話に終始していて、
そもそも実験画像をどのように管理するか?
という議論がほとんど出てこないことには違和感を持ちます。


先月某民間のラボを訪問した時のことですが、
実験結果としてのデジタル画像の扱いに関する話がでました。

大学や公的研究機関では、実験画像をどう管理するか?
みたいな話はあまり聞きませんが、
特にGLP試験では厳密な管理が求められます。

基本的にデジタル画像は改変可能であるので、
フィルムを使うことが原則である、というのです。



個人のサイトですが、
http://www.it-asso.com/gxp/notice.htm
GLP試験における、デジタルカメラの取扱いに関する記載があります。
以下引用
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GLP試験におけるデジタルカメラの使用は、2001年の第7回GLP研修会における Q&Aに見られるように、議論がありました。 その後、2007年の第13回GLP研修会において、 近年の技術革新を反映した見解が示されました。 以下に、両GLP研修会における当局の見解を紹介します。

第7回GLP研修会
デジタルカメラで撮影した画像データは、パソコンでの編集が可能であり、 しかも加工したかどうかを判別することが困難である。 ゆえに、生データと定義するのは現在のところ難しいと考える。 そのようなデータを最終報告書に使用することは避けるべきであり、 生データである普通のカメラで写したネガ又はポジから起こした写真を 使用していただきたい。

第13回GLP研修会
写真が使用される項目としては、病理関係、眼検査関係及び刺激試験関係と思われる。 多くの施設においては、これらの試験では所見用紙が生データと定義されており、 写真は参考資料の位置づけとされている。 したがって、デジタルカメラによって撮影される画像データも同様に、 参考資料という位置づけになるものと考えられる。 しかしながら、参考資料であっても、施設毎に、 デジタルカメラの使用目的や使用範囲を明確にし、 手順及び記録を充実させた上で、教育を適切に実施する必要がある。 すなわち、適切に教育された職員により、手順に従い実施された一連の操作履歴を残し、 プロセスの妥当性を示すこと等により、デジタルカメラ画像データの信頼性 (特に非改竄性)を保証しておく必要がある。
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ただし、時代的に考えて、
今後永遠にフィルムを使うというのはさすがに無理があるとも思えます。



独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
GLP適合性調査について
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/outline/shinrai/file/h25glp/glp06.pdf
に「デジタル画像を「生データ」として利用することについて」という記載があります。

以下引用
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デジタル画像を生データとする際の注意事項

・撮影画像の改ざん防止策がとられていること。

・法令で定められている期間、以下の対応がとられていること。@読み取り機器が動くこと。A保存媒体を読み取ることができること。Bデータを読み取れるソフトウエアが残っていること。

・当該データの撮影者、ファイル識別、撮影日時等、GLPが求めている生データとして要求される情報を何らかの方法で記録すること。

・バックアップを作成する場合は、その定義をSOPで明確にすること。

・コントラスト、拡大/縮小等のデータ加工を行う場合、その加工手順がSOPなどで明確化され、記録されていること。ただし、元の画像データは生データとして残すこと。
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つまり、適切な管理体制が取れない場合には
デジタル画像を使用せずにやはりフィルムを使うべきということになります。

と、ここで、「生データ」という表現がいくつか出てくるのに気付きます。
GLPなどに関わりのない研究者は
「生データ」とはなにか?
についてあまり深く考えたことがないかもしれません。
GLPではこの辺は結構面倒なんですね。



株式会社イーコンプライアンス
http://ecompliance.co.jp/merumaga/eCompliance_Tsushin_39.pdf
「電子生データの留意点」という項目があります。

以下引用
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“ 生データ” とは、実験室内のワークシート記録書、覚え書き、注意書き、またはその正確なコピーをいい、これは非臨床試験の原観察結果およびその業務についての成績であり、この試験の報告の再構成および評価のために必要である。生データの正確な転写( 例えば、そのまま転写され、日付をつけ、署名によって正確であると確認されたテープ) が用意された場合には、その正確なコピーまたは正確な転写を生データとしてもとの資料と置き換えることができる。生データは写真、マイクロフィルムまたはマイクロフィッシュ、コンピュータ記録、観集結果を口述した磁気記録および自動装置から記録されたデータでもさしつかえない。
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画像の生データの適切な管理体制とはいったいどうすればよいのでしょうか?
先のラボ訪問の時に聞いた話では、
カメラがつながっているパソコンで実験画像を取り込んだ際に、
強制的にその画像が一元管理されたサーバに転送される仕組みになっており、
そのサーバで画像の生データは保存され、
実験者はその生データにはアクセスすることができない、
という仕組みがあるそうです。

これなら確かに実験者が画像を改変・捏造しても
生データは確実に残ってチェックが容易です。



研究結果として画像を出す場合には、
「見やすさの改善」のために、
いろいろ画像を処理・改変することは当然のようにあると思います。
論文などであればwebのみに掲載されるAppendixなどに
厳密に定義された「生データ」も掲載するとか、
いろいろな管理方法があるかもしれません。

GLPの精神とはプロセスチェック
(適切なプロセスで得られた試験結果は適切である)
であって、
ファイナルチェック(最終製品の検査)に依存しないという考え方です。
出版された論文の画像のチェック(捏造がないかどうか)
だけに頼るというのは、
全頭検査・全品検査一直線のロジックですね。


posted by shimana7 at 00:02| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする