2013年05月25日

除草剤の藻類影響と藻類エネルギー


先の記事で紹介した藻類のハイスループット試験の論文ですが、
電子版ではすでに公開されています。
Nagai Takashi, Taya Kiyoshi, Annoh Hirochica, Ishihara Satoru (2013)
Application of a fluorometric microplate algal toxicity assays for riverine periphytic algal species.
Ecotoxicology and Environmental Safety, in press
http://dx.doi.org/10.1016/j.ecoenv.2013.04.020

この方法で各種藻類に対する除草剤の影響を現在調べているところですが、
ふと気になって、最近話題の藻類エネルギーのことを調べてみました。


藻類エネルギーと言えば、
もともと藻類学が強かった我が筑波大が今や聖地のようになっています。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/index.html
(私が藻類好きなのもこのおかげです)

私が大学時代に住んでいた平砂宿舎1号棟の
すぐ目の前にあった平砂プールが
いまや大規模藻類培養実験施設に変わっているのはとても感慨深いです。
(当時すでにプールとしては使われておらず、
いつも魚を捕って遊んでいた)



オイル産生藻類のボトリオコッカス(緑藻)と
オーランチオキトリウム(ラビリンチュラ類)を用いて、
開放系大規模生産実証試験として、
つくば市内の耕作放棄地を活用した屋外大量培養の研究開発に着手します、
と研究計画にはあります。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/02project/index.html

開放系での培養となると、いろんな藻類あるいは雑草が繁殖しますので、
それを抑えるために除草剤の使用が不可欠となるでしょう。
ここが一番の私の気になるところでした。

上記と同じ渡邉・彼谷研究室のサイトを見ていくと、、、
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改良品種の開発
除草剤耐性の突然変異株の作成に成功しました。
この成果とボトリオコッカスが強い抗生物質耐性をもつことが判明したことにより、異種混入を制御することが可能となり、開放系での大量生産技術開発への道を大きく拓きました。
http://www.algae-biomass-tsukuba.jp/watanabe-kaya-lab/02project/index_02.html
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とありました。
なるほど、遺伝子組み換え作物でよく使われる考え方ですね。
(変異体だから定義上遺伝子組み換えではないのでしょう)

論文はたぶん↓だと思います。
Ioki, M, Ohkoshi, M, Nakajima, N and Watanabe, M (2012) Isolation of herbicide-resistant mutants of Botryococcus braunii. Bioresource Technology 109, 300-303
http://dx.doi.org/10.1016/j.biortech.2011.07.101

パラコートとグルホシネートに耐性を持つ変異体を開発したとあります。
なんでこの二剤なんだろう???
と思いましたが、おそらく代表的な非選択性除草剤ということで選んだのでしょう。

ただし、これらの剤は残念ながら藻類にはあまり毒性が強くないので、
これらを使用するとなると、
とんでもない量をまかないと効き目が出ないと思われます。

実際に論文中の実験では
パラコートを13mg/L、グルホシネートを100g/Lも入れています。
こんなのを使って休耕田で野外培養なんてやったら大変なことになりそう
というのが正直な感想です。
ちなみに水田で使用する除草剤の田面水中濃度は最大でも1mg/L程度です。
新規技術に伴うリスクとして考える必要が出てくるでしょう。


各種藻類に対する除草剤の影響を調べているところなので、
こういう用途に使うならもっと適した剤がいくつもあるのにな、
と思ってしまいます。

つづく。。。かも
posted by shimana7 at 22:53| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする