2012年02月27日

排水の生態リスク評価


みなさまお久しぶりです、生きてます。
本日は拙著論文の紹介です。

新しい論文がEcotoxicology and Environmental Safety誌に受理されました:
「Ecological risk assessment of on-site soil washing technique with iron(III) chloride in cadmium contaminated paddy field」
BY Nagai Takashi, Horio Takeshi, Yokoyama atsushi, Kamiya Takashi, Takano Hiroyuki, Makino Tomoyuki

http://dx.doi.org/10.1016/j.ecoenv.2012.02.011

これはカドミウム汚染土壌のオンサイト土壌洗浄技術に伴う
洗浄排水の生態リスク評価を行った結果を報告したものです。

土壌洗浄に関してはコチラ↓ 
土壌洗浄法によるカドミウム汚染水田の実用的浄化技術を確立
―低コストで水田土壌のカドミウムを除去―
http://www.niaes.affrc.go.jp/techdoc/press/100819/press100819.html


実際に二箇所の水田転換畑土壌でオンサイト土壌洗浄試験を行い、
その洗浄排水の処理後の放流水をサンプリングして
化学物質濃度の分析や毒性試験を行ってリスク評価を行いました。


排水の生態影響評価といえばWET法が注目されています。
(WETはWhole Effluent Toxicityの略)
WET法では排水の毒性を明らかにすることが注目されきましたが、
その排水が流れ込む河川でどのようなリスクがあるのか?
という部分は見落とされてきました。
(これは排水基準全般に言えることですが)

私が今回注目したのはその部分で、
排水の毒性を評価するだけではなく、
その排水の放流先での生態リスクをどうやって評価するか、
というフレームをこの論文で提案したところがアピールポイントになります。


そのフレームをここでは簡単に説明しておきます。
一般的な生態リスク評価では
化学物質の無影響濃度と実際の河川水中濃度との比較でリスクの有無を評価します。
排水の場合はいろんな化学物質のMixtureですが、
放流先の河川水で希釈されれば毒性は下がります。

そこで、排水がどこまで希釈されれば無影響になるか、
という無影響希釈率を決定し、
実際の放流先での希釈率と比較してリスクを評価します。


無影響希釈率の決定には
WET法によるものと
個別化学物質濃度から推定するものと二種類の方法を用います。

というのは、それぞれの方法は一長一短があり、
お互いにうまく組み合わせることでその弱点を補完でき、
より頑健な手法になるからです。

WET法はさまざまな化学物質のMixtureを
そのまま評価できるという利点がありますが、
試験を行う生物は限られてきます。
(せいぜい魚類、甲殻類、藻類の3点セット)

個別化学物質濃度からの評価では、
種の感受性分布を用いることで
幅広い生物種への影響を定量的に評価できます。
さらに、希釈による影響の低減も連続的に表現できます。
Mixtureの評価も一応できます(検証されてませんが)。
ただし、多くの毒性データと、個別物質の濃度の分析が必要になるので、
解析できる化学物質の種類は限られます。


今回の結果では、二種類の無影響希釈率を比較して大差がなかったことで、
うまい具合に補間できているのではと考えています。

結果的には
・排水の放流先での生態リスク評価法

・WETと個別化学物質管理の融合

・新しい技術のリスクを先取り評価

という三点で新しい生態リスク評価のフレームを示すことができて、
自分としては満足しています。


でもって、肝心の土壌洗浄のリスクですが、
無影響希釈率よりも実際の希釈率がはるかに大きいため、
リスクの懸念はないと評価されました。
こういったことで新しい技術の普及を後押しできればうれしい限りです。




posted by shimana7 at 23:05| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。