2011年10月25日

筑波大での講義内容


先日、筑波大学で化学物質のリスク評価についての講義をする機会がありました。
環境ディプロマティックリーダーの育成プログラムという
専攻の修士課程の学生向けの講義です。
この専攻はすべてを英語のみを用いて修了できるというところが特徴で、
当然講義もすべて英語です。

私の担当は「水総合学」という科目の二コマ分で
昨年度から担当しています。
約3時間で水に関わる化学物質のリスク評価について
概要をざらっと説明するような内容になりました。
とりあえず現状はこうなってますよ、という表面的な内容です。

受講生による感想も帰ってきて、
プレゼンテーションの技術は素晴らしいという
感想が多くあったのは嬉しいかぎり。
議論の時間も欲しかったという意見もありました。
英語でファシリテーションまでできないということもあるのですが、
ある程度の基礎知識を詰め込んでからじゃないと
ディスカッションもあまり意味がないと思っています。


講義の概要は以下に簡単に紹介しますが、
こんな内容であれば話すことができますので
ご要望がありましたらお声をかけて頂ければ
無理のない範囲で対応したいと思います。。
英語でもできますがあまりに負担が大きいので、
できれば日本語でやりたいです。。。


講義内容は以下の4つのパートに分けました。
1.リスク評価とリスク管理の紹介
2.ヒト健康リスク評価
3.生態リスク評価
4.今後のリスク管理に向けて

パート1では、
・リスクとは何ぞや?その定義について
・公害と環境リスクは何が違うのか?
・リスク評価とリスク管理の関係について
を話しました。

その中で、
a) 現状のリスクの大きさを明らかにする
b) リスクの大きさを考慮して、複数のリスク低減対策を提案する
c) 各対策を打った場合のリスク低減効果を予測して、その効率を評価する
d) 効率を考慮して実行するべき対策を決定し、実行する
という理想的な評価・管理のプロセスを説明し、
リスク評価の役割として、a)とc)に活用できるようなことを行うのが望ましい
ということを話しました。


パート2では、
まずリスク評価のプロセス
(ハザード同定、影響評価、曝露評価、リスクキャラクタリゼーション)
を説明し、4つの事例を示しながら、これらのプロセスの具体例を示しました。

一つ目は魚類中の水銀の事例で、
水俣病患者の調査からのNOAELの決定、
そこから摂取量に換算してTWIを計算する方法、
さらに、魚類中濃度に換算して基準値を計算、
最後に生物濃縮係数から水中濃度の基準値を導出する、
という、一連のプロセスを示しました。
次に、現状の魚類中濃度を示し、基準値を超えている魚種について
摂食制限をすることで水銀摂取量がどれくらい減るかなどの試算を
示しました。

二つ目は放射性物質の管理についてで、
放射性ヨウ素やセシウムの暫定規制値の導出根拠や
現状の検出状況などを説明しました。

三つ目は水道水質基準の事例で
動物実験や、疫学調査、発がん性などから
水道水質基準値を導出する方法、
閾値の有り無しや不確実性係数についての説明を行い、
基準値を超えた水を飲んだ場合のリスクの計算方法
を示しました。

四つ目は水道水の感染症リスクと塩素消毒による消毒複製生物の
リスクトレードオフの事例で、
詳しくは昨年度の記事を参考にしてください。
http://shimana7.seesaa.net/article/164871442.html


パート3では、
DDTに始まる化学物質の生態リスクの歴史
生態リスク評価のフレームワークについて
生態系の何をどこまで守ればよいのか、という話
(先日の記事も参考に
http://shimana7.seesaa.net/article/226710688.html
室内毒性試験の手法、
不確実性係数とPNECの導出方法
個体群モデルやメソコスム試験などの高次評価法
水中濃度モニタリングやモデリングによる曝露評価
HQやMOEなどのリスク指標について
をざっくりと説明し、
農薬の生態リスク評価の手法
種の感受性分布を用いたリスクの定量化と
そのリスク管理への応用を示しました。


パート4では、
死亡率によるリスクランキングや、ARALAの原則などを説明し
リスク管理の原則論を話しました。
リスク管理の最適化の手法として、
架空のリスク管理オプション事例を示しながら
費用便益分析の手法を説明しました。

最後に外交問題とリスクの関係として、
リスクを根拠とする非関税障壁と貿易摩擦について説明し、
リスク評価の国際調和の必要性などを話しました。

posted by shimana7 at 22:27| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする