2011年09月19日

レギュラトリーサイエンス 〜生態系の何をどこまで守るのか?〜


米国が策定した生態リスク評価のフレームワークによれば、
生態リスク評価は下図のように、
1.問題設定、
2.分析(曝露評価と生態影響評価)、
3.リスクキャラクタリゼーション
という三つのフェーズに分かれます。
USEPA (1992) Framework for ecological risk assessment. EPA/630/R-92/001
http://www.regulations.gov/#!documentDetail;D=EPA-HQ-OA-2007-0676-0001

生態リスクのフレームワーク.png

このうち、ほとんどの人が「リスク評価」といえば
曝露評価か影響評価のことを指していると考えます。
ところが、このフレームワークのうちどれが一番重要かと問われれば、
私は「問題設定」こそが一番重要! と答えます。

問題設定ではまず「望ましくない出来事」としてエンドポイントを明確に定めます。
生態リスク評価において特徴的であるのは、
問題設定のフェーズのところで、
評価対象とする生態系や時空間的な評価スケール、
評価エンドポイントや概念モデルを決定し、
「そもそも何を問題とするか」を絞り込む作業を重要視する点にあります。

これは、ヒトの健康と違い、
生態系の場合は何をどこまで守れば十分なのか
という問いに対する統一的な解が存在しないためです。
生態系保全のゴールは高度に複雑です。


どの生物種を守るのか?どの程度守るのか?
これによって、リスク評価の手法が決まってきます。
逆に言えば、これが決まらなければリスク評価はできません。

つまり、
「万能なリスク評価手法というのは存在しない」
のであり、
ものすごく限られた問題設定に対してのみ
答えを出せるのが現状のリスク評価なのです。


例えば、、、
「メダカの地域個体群の絶滅」
を問題だと考えるならば、
→メダカの個体群が絶滅するかどうか
というリスク評価をする必要があり、
これを達成するための手法を採用することになります。

また、
「河川生態系の種の多様性の減少」
を問題だと考えるならば、
→どの程度の種が影響を受けるか
というリスク評価を達成するための手法を採用します。

ミツバチやトンボの減少を問題にしたければ、、、
など同様です。

繰り返しますが、
一つのリスク評価がこれらすべての問題をカバーすることなど
現時点では不可能なのです。


このようなところに、
「○○を問題とし、△△は問題としない」
というような言わば約束事が入り込みます。

よって、
「そのリスク評価では△△を見ていないじゃないか?」
というような指摘は、非常によくありがちでもっともではあるものの
ツッコんでもしょうがないことであったりするわけです。

そのようなときは、
「なぜ問題設定のフェーズで○○を問題としたのか?」
と指摘するのがよいでしょう。


ということで次回は、
現時点で行われている「標準的な」生態リスク評価は
いったいどんな問題設定をしているのか?を解説してみます。

posted by shimana7 at 22:49| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする