2010年11月12日

CREAM


CREAM(Chemical Risk Effects Assessment Model)プロジェクトとは何か?
以下の論文を元に簡単にメモ。
Grimm et al. (2009) CREAM: a European project on mechanistic effect models for
ecological risk assessment of chemicals. Environ Sci Pollut Res, 16:614-617


欧州における農薬の生態リスク評価の枠組みの中に、
数理モデルを用いた個体群レベルの評価を取り入れようとする、
近年活発な一連の流れの一つ。
この大きな流れはデンマークのValery Forbesさんが
主導していると思われます。
そして最近出版された本にもまとまっています。
Pernille Thorbe et al (Ed) (2009) Ecological Models for Regulatory Risk
Assessments of Pesticides: Developing a Strategy for the Future. Crc Press
(買ってみたけど、
いろんなところに散らばっている論文たちの
寄せ集めみたいな感じで、これで一万円は高い。。。)


さらに最近、農薬の生態影響評価ガイダンス文書の改訂に向けての
EFSAのサイエンティフィックオピニオン
が出され、その中でも
モデルを用いた個体群レベルの評価が後押しされています。
Scientific Opinion on the development of specific protection goal options for
environmental risk assessment of pesticides, in particular in relation to the
revision of the Guidance Documents on Aquatic and Terrestrial Ecotoxicology
(SANCO/3268/2001 and SANCO/10329/2002)
http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/scdoc/1821.htm


そして、CREAMプロジェクトでは、
欧州の"Marie Curie Initial Training Network"なるファンドの支援を受けて、
1.Good Modeling Practice (GMP)の作成
2.個体群レベルの影響評価モデルの開発
3.モデラーやモデルの使用者のトレーニング
を目的としているようです。

特徴としてはGMPの考え方と、農薬メーカーが参加していることです。

毒性試験による評価→GLP
モデルによる評価→GMP
ということで、農薬登録審査への活用を見据えたもの
ではないか、と考えられます。

さらに、モデルによる評価で
試験にかかるコストを減らせる可能性もあるので、
メーカーの狙いはその辺にあるのでは、と想像されます。


実際の研究プロジェクトの内容などはwebサイト:
http://cream-itn.eu/
から見ることができます。

水棲無脊椎動物、陸棲無脊椎動物、脊椎動物、GMP、バリデーションデータセット
と5つのワークパッケージに分かれ、
さらに、Daphnia-1, Fish-1など、
20程度の個別課題があります。

GMPのプロセスなどは
Transparent and comprehensive ecological modeling (TRACE) documentation
ということで、GLPと同じように
様々な記録(TRACE文書)を付けていくことが重要、
とされているようです。

バリデーションデータセットとしては
メソコスム試験が有用となるでしょう。



とまあ、ここまでやられると、
なかなか日本勢はかないそうもないような気がしてきます。
やはり日本としては、こういった流れをチェックしながら
水田という日本独特の特徴をとらえたニッチな世界を狙う戦略が
良いのでは、と思えてきます。

posted by shimana7 at 09:14| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする