2016年11月23日

SETAC 北米大会に参加しました



The 7th SETAC World Congress/37th SETAC North America Annual Meeting
2016年11月6-10日 フロリダ州オーランド
https://orlando.setac.org/
に行ってきました。実は北米大会は初参加です。


・金属関係
Metal Mixtureの関連は発表の数も大変多く盛り上がっていた感じでした。
ほとんどのものが、金属のMixtureはCAモデルと比較すると拮抗作用、
もしくはIAモデルが合う、という内容のものでした。
つまりは、各金属の作用機作は異なっていて、
同じLigandに結合して毒性を発現するというモデルは通用しなさそう、
ということが示唆されていました。


・パッシブサンプリング
今回とても収穫の多いセッションでした。
農薬のモニタリングのためのパッシブサンプラーである
POCISは大人気のようでした。

我々もPOCISを大プッシュしていますよ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27305429

ところが、さらに新登場したのがo-DGT(organic DGT)です。
その名の通り、金属のモニタリング用に開発されたDGTの有機物版です。
ほやほやの論文:
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.analchem.6b02749
これは将来楽しみですね。

ちなみに、オリジナルのDGTについてはコチラ(拙著):
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/68/3/68_3_391/_article/-char/ja/


・メソコスム、野外生態系観測
USGSのグループが質・量ともにぶっちぎりな感じでした。

1年間の間に100地点で12回のサンプリングを行い、
農薬は2種類のパッシブサンプラーを用いて300種類測っていて、
生物相も魚類、底生動物、藻類を調べていて、
さらに、野外で採取した生物群集を用いて、
メソコスム実験をするとか、
聞いていて気を失いそうになりました。。。

WEBサイトは以下:
The Midwest Regional Stream Quality Assessment (MSQA)
https://txpub.usgs.gov/RSQA/MSQA.aspx
データもダウンロードできるようです。


・農薬の生態リスク
ネオニコ関係はいくつか面白いものもありましたが、
ハチの野外試験などがメインで、
あまり私の興味の対象ではパッとしたものがありませんでした。


・Major ion
米国の電気伝導度の基準値は室内試験では無く
野外生態系観測の結果から決まっているそうで、
こういうアプローチの成功事例になるだろうと思いました。

USEPA: A Field-Based Aquatic Life Benchmark for Conductivity in Central Appalachian Streams (Final Report)
https://cfpub.epa.gov/ncea/risk/recordisplay.cfm?deid=233809&CFID=80271835&CFTOKEN=20606729

Aquatic Life Benchmarkとあるので、
まだ国の基準値として採用はされていないのだろうと思います。
それにしても面白いデータです。
野外生物調査の結果からSSDを構築してfield-based HC5を計算しています。
当然ながら海水と淡水では生物相が全く違うので、
そもそも電気伝導度というのは
生物相の差が出やすいんだろうな、とは思うのですが。


・水質基準ガイドラインの改訂
こちらは国の基準値設定の大元となるガイドラインの改定に関する話。
現在のガイドラインは1985年に作られて、
30年以上改訂されていないのです。

USEPA: Guidelines for Deriving Numerical National Water Quality Criteria for the Protection of Aquatic Organisms and Their Uses
https://www.epa.gov/wqc/guidelines-deriving-numerical-national-water-quality-criteria-protection-aquatic-organisms-and

現在この改訂作業が進んでおり、
スコープ文書なるものが2017年、
最終的な新ガイドラインの発効は2021年を予定しているのだそうです。


・自分の発表
私は二件のポスター発表:金属関係1つと農薬関係1つを行いました。
興味を持ってくれたのはほとんど産業界の人でした。
論文の別刷りは全部はけましたが、
ヨーロッパ大会ではいつも足りなくなっていたポスターのA4コピーは全然はけず、
興味の対象も違うのかもしれません。


・全体
会場はだだっ広いホテルでリゾートな雰囲気はあるものの、
周りになーんにも無く、
外にランチを食べに行くこともできない不便すぎなところでした。
せめて町中でやって欲しいところです。

IMG_3488.JPG

会場で売られているまっずいサンドイッチ(8$!)は衝撃的でした。

IMG_3485.JPG

オーランドはディズニーやUSJもあり、
ちょっと足を伸ばせばケネディ宇宙センターなどもあり、
見所いっぱいな場所だそうですが、
そんな雰囲気を感じることも無く帰路につきました。。。


posted by shimana7 at 23:08| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする