2015年09月27日

イベント情報


日本陸水学会大会に参加するため函館に来ています。

11月からイベント三昧です。
いくつかお知らせします。



1.第15回有機化学物質研究会
農業環境をめぐる有機化学物質研究の昨日・今日・明日
−化学物質と環境との調和を目指して−
http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/sympo/h27/20151105.html

2015年11月5日に、つくばで開催されます。
私は
「農薬の水域生態リスク評価の最前線 −シングルストレスからマルチストレスの世界へ−」
というタイトルで講演します。
ここ数年の研究成果のまとめと今後の展望について話す、
という内容です。



2.2015年度第28回日本リスク研究学会年次大会
http://www.sra-japan.jp/SRAJ2015HP/indexjp.htm

2015年11月20−22日に、名古屋大学で開催されます。

私は企画セッションにて、
「もれのないリスク評価のためにデータギャップをどう埋めるか −農薬の定量的生態リスク評価の事例報告」
というタイトルで講演します。

さらに、「リスク管理の歴史学」
という一風変わった企画セッションをオーガナイズします。
詳細はまた後日お知らせすることにします。



3.日本環境変異原学会第44回大会
http://www.congre.co.jp/jems2015/

2015年11月27−28日に、九州大学で開催されます。

市民公開講座「食の安全 -リスクをどう考えたら良いのか-」
http://www.congre.co.jp/jems2015/src/jems2015_simin_0917.pdf
にて講演します。
「基準値のからくり」共著者の村上道夫とさんとの共演です。

・「我々はこれまでどれだけ危険な食品を食べてきたのだろうか?-食品中に含まれる発がん物質の評価-」
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)

・「基準値の根拠から考える水の安全」
村上 道夫(福島県立医科大学 医学部 健康リスクコミュニケーション学講座)

・「基準値の根拠から考える食の安全」
永井 孝志(国立研究開発法人農業環境技術研究所・有機化学物質研究領域)



4.サイエンスカフェ
12月につくばで開催予定です。
この手のイベントに登場するのは初になります。
詳細は決まり次第告知します。
posted by shimana7 at 22:00| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月20日

EUにおける農薬水域生態リスク評価の新ガイダンスの根拠論文


タイトルまんまなのですが、かなりの重要文献です。

RPA van Wijngaarden, L Maltby, TCM Brock (2015)
Acute tier-1 and tier-2 effect assessment approaches in the EFSA Aquatic Guidance Document: are they sufficiently protective for insecticides?
Pest Manag Sci, 71, 1059-1067

EUでは2013年に農薬水域生態リスク評価の新ガイダンスを公表しました
Guidance on tiered risk assessment for plant protection products for aquatic organisms in edge-of-field surface waters
EFSA Journal 2013;11(7):3290

そこでは、
Tier-1: 標準試験生物種の毒性データによる評価
Tier-2: 追加試験データを用いた評価(種の感受性分布, SSD含む)
Tier-3: メソコスム試験による評価
という主に三段階の評価が採用されています。

でもって、いろんな不確実性係数が導入されており、
SSDを使う場合、HC5を不確実性係数3〜6で割ることとなっています。
上記の論文はその不確実性係数の根拠が示されています。

まずメソコスム試験による無影響濃度を「真の」無影響濃度(NOECeco)だと見なします。
(その是非はとりあえずおいといて、、、)
HC5とNOECecoは大変キレイな直線関係にありますが、
さらにHC5を3〜6で割ることで、
HC5の方がほとんどの場合に安全側の評価値になるというわけです。



これで、新ガイダンスにかかわる論文は三つめになります。
ほかの二つは以下のとおりです:
(なんか3つとも雑誌の選択間違っている気がしますが。。。)

TCM Brock, RPA van Wijngaarden (2012)
Acute toxicity tests with Daphnia magna, Americamysis bahia, Chironomus riparius and Gammarus pulex and implications of new EU requirements for the aquatic effect assessment of insecticides
Environ Sci Pollut Res, 19, 3610-3618
上記の論文はこれの続きのようになっています。

TCM Brock, M Hammers-Wirtz, U Hommen, TG Preuss, HT Ratte, I Roessink, T Strauss, PJ Van den Brink (2015)
The minimum detectable difference (MDD) and the interpretation of treatment-related effects of pesticides in experimental ecosystems
Environ Sci Pollut Res, 22, 1160-1174
こちらはTier-3のメソコスム試験の解析方法を記したものです。
これからはPRCではなくMDDです。



ここから余談。。。
余談1:上記の3論文の著者を見ればわかりますが、
このEU新ガイダンスの影響評価のパートは
ほとんどBrock氏一人で決めたのではないか?という気がします。
新ガイダンスの解説などもほとんどこの人がやっています。
この辺の権力関係がどうなっているのが大変興味深いです。

余談2:
このEUの新ガイダンスにより、
メソコスム試験に厳格な妥当性基準が設定され、
従来あったメソコスム試験のデータは
ほとんどが妥当性基準を満たせずに却下されることになりました。

すなわち、上記の論文で「真の」無影響濃度とされているデータも、
(実際にひとつひとつ調べたわけでは無いが)
ほとんどが新ガイダンスにおいては
却下されてしまうデータだということになります。

この辺にいろいろ矛盾している部分もあるわけですが、
現時点で新基準を満たすメスコスム試験データは
ほとんど存在していないわけですから、
まあまあしょうがないよね、というのも現実的な考えかと思います。
posted by shimana7 at 23:06| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月13日

環境毒性学会


第21回日本環境毒性学会研究発表会
(9月2〜3日 東洋大学)
に参加し、二題の発表を行いました。

○永井孝志, De Schamphelaere KAC, van Regenmortel T
Biotic Ligand Modelを用いた日本の水質における金属の生態影響評価
(口頭)

○谷地俊二、永井孝志、勝又政和
藻類の化学物質曝露期間とその後の回復期間におけるクロロフィル遅延発光の変動
(ポスター)

私の発表はBLMの宣伝ということで、
昨年ベルギーで行った研究を発表しました。
この日は曝露と毒性の統合に関する特別セッションがあったのですが、
私の発表の方がよっぽどこのテーマにふさわしかったのではないかと思います。
リスク評価では曝露と毒性を統合するのは当たり前ですからね。。。

あとは、いろいろと知り合いと情報交換できたのは良かったです。
なかなかそういう機会にも飢えているのです。

ところで、谷地さんは藻類の回復性試験に関する発表で、
ポスター賞を受賞しました。
喜びの写真を掲載します。
ポスター賞.JPG
posted by shimana7 at 22:11| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする