2017年07月27日

契約研究員の募集


一緒に働いていただける方を募集中です。
修士または博士が対象です。
農薬が水草に与える影響を評価します。

契約研究員の募集【生態リスク】

勤務条件、仕事内容などの問い合わせは私でも大丈夫です。
なお、プロジェクトは少なくとも3年は続く見込みです。

ぜひともよろしくお願いします。
posted by shimana7 at 08:01| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月02日

スルホキサフロルの新基準値案

平成29年6月19日 環境省 報道発表資料
「水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準値(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について
http://www.env.go.jp/press/104178.html
にあるように、農薬の基準値案について7月18日までパブコメが実施されています。

上記WEBサイトの
(参考2)水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準として環境大臣の定める基準の設定に関する資料
に、各基準値案の根拠が掲載されています。


注目すべきはスルホキサフロルという新しい殺虫剤の基準値です。
ネオニコチノイド系農薬とは構造が異なりますが、
作用特性が近いことが知られており、
ポストネオニコに位置づけられるものです。

この殺虫剤はすでに基準値が設定されており、
環境省 水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準について
http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun.html#list03-sa
にリストされている通り、
平成26年4月7日に39,000μg/Lと設定されています。

今回はこの剤について新しいルールによって基準値が再設定されました。
昨年度から始まったこの新ルールについては以前解説したものがあります:
http://shimana7.seesaa.net/article/439257715.html


さて、スルホキサフロルの毒性データ(参考2 22ページ目)を見てみると
----
魚類[@](コイ急性毒性) 96hLC50 > 402,000 μg/L
魚類[A](ニジマス急性毒性) 96hLC50 > 387,000 μg/L
魚類[B](ブルーギル急性毒性) 96hLC50 > 360,000 μg/L

甲殻類等[@](オオミジンコ急性遊泳阻害) 48hEC50 > 399,000 μg/L
甲殻類等[A](ユスリカ幼虫急性遊泳阻害) 48hEC50 = 309 μg/L

藻類[@](ムレミカヅキモ生長阻害) 72hErC50 > 101,000 μg/L
----
となっており、ネオニコと同様、ユスリカ以外にはほとんど毒性を示しません。

そして、追加で提出されたユスリカのデータに基づき
最も低い毒性値である309を不確実係数10で割ると30.9となり、
数字を丸めて基準値案は30μg/Lとなりました。
ユスリカのデータを加えたことで、
以前の基準値と比べて1000倍以上厳しい値になりました。

このようにネオニコチノイド系農薬や類似の作用の農薬について、
新しいルールに基づく基準値の再設定が今後続くことになります。

posted by shimana7 at 22:45| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月04日

「○○で何人死亡」と言いたい場合のエビデンスレベルの明示の方法


国立がん研究センターなどによる研究:
たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究
http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201508017A
において、疫学調査などから推定された受動喫煙にによる年間死者数は
15000人(肺がん2,480人、虚血性心疾患4,460人、脳卒中8,010人)と報告されています。
たばこ=肺がんだと思っていたらそうでもないんですよね。
10万人あたりに直すと12人/年となります。
リスクファクターとしては大変大きなものと言えるでしょう。


計算方法の事例は、NATROMさんによる記事:
受動喫煙による死亡者数はどうやって計算しているのか
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20170517
の中にとても明快に書かれています。

ツイッターなどでこれについての議論が多く行われており、
リスク学以外の分野からみた議論を興味深く見させていただきました。
一番びっくりしたのが、
受動喫煙の疫学調査はいわゆるコホート研究であって、ランダム化比較試験(RCT)ではない
(両者の違いは例えばこことかを見てください:
http://screamtheyellow.hatenablog.com/entry/2014/12/13/010753
ので、健康増進法等の規制を強化するにはエビデンスのレベルがまだ低い、
などの意見でした。

化学物質のリスクを扱う分野からするとこれで文句がつくとは
思わずひっくり返る思いがします。
人体実験が不可能の化学物質のリスク分野ではRCTは基本的にあり得ないので、
コホート研究のまともなのが一つでもあれば万々歳な世界です。
例えば農薬の有害性評価は基本的に動物実験からの外挿です。
そのため外挿における不確実性を考慮して
とりあえず100で割っておこうという「作法」が生まれてきました。
疫学研究があっても、直線閾値なしモデルによって低用量外挿をしたりします。
こういう世界と比べると受動喫煙のエビデンスなどは十分に高いレベルにあると思います。


以下の記事は受動喫煙のエビデンスレベルに関する話で、とても良記事だと思います。

科学者はどのように「不完全なエビデンス」を国民に伝えるべきか?
https://healthpolicyhealthecon.com/2017/05/28/imperfect-evidence/

受動喫煙防止法について論点整理@:受動喫煙による健康リスク・死亡者数の推定はどのくらい信用できるか?
http://krsk-phs.hatenablog.com/entry/secondhand_smoke_1


特に二番目の記事ではエビデンスレベルと不確実性の明示について書かれています。
リスク学の分野でも不確実性の明示の話は日常的に議論されています。

ちょうど昨年度のリスク学会でも、
「○○で何人死亡」と言いたい場合のエビデンスレベルの明示の方法の話を取り上げました。
http://www.sra-japan.jp/SRAJ2016HP/kikaku_session-3.htm

特に注意すべきなのは、リスク比較の文脈で、
エビデンスレベルの異なるリスクの数字を比較する際には
きちんとそのエビデンスレベルの明示が必要である、ということです。
例えば、交通事故死者数は統計情報があるのに対し、
上記の受動喫煙は疫学調査からの推定値ですので、そのエビデンスレベルは違います。
以下は昨年度のリスク学会で提案したカテゴリ分けの案です。
IARCによる発がん性の分類(1とか2Aとか)に類似の概念です。

-----
エビデンスの種類によってカテゴリを3つ(細かく分けると4つ)に分ける。
カテゴリ1は実際の統計データに基づいているので最も信頼性が高い。
ただし、単年度では件数が少ない(10人以下)、
あるいは年変動が大きく、数年分のデータで平均をとる必要がある場合もある。
そこで、単年度の実際の死者数の統計データを使用した場合にカテゴリ1A、
数年分のデータをプールして使用した場合をカテゴリ1Bとする。

カテゴリ2は信頼できる疫学調査から計算したリスクで、
カテゴリ1の次に信頼性がある。
例えば、たばこ、アルコール、肥満、食塩などは十分な数の疫学データがあり、
現状の一般人に有意なリスクが検出されているものである。

ただし、放射線などは疫学データが十分あるが、
現状の一般人に有意なリスクが検出されているものではなく、
低用量の影響を外挿(直線外挿)により補間したものとなる。
これはさら信頼度が落ちるため、カテゴリ3とする。
また、ヒトのデータが無く動物実験からの種間外挿もカテゴリ3とする。
-----

こんなようなカテゴリ分けの明示をリスク比較では活用してもらいたいです。
交通事故はカテゴリ1A、受動喫煙はカテゴリ2になります。


ただし、交通事故なら交通事故死の定義(事故発生から24時間以内に死亡した人)があり、
それを変えると年間死者数も変わってくるため、
カテゴリ1といえども絶対的な数字ではないことに注意が必要です。

さらなる問題は「分母を何にするか」ということです。
例えば入浴中の溺死(カテゴリ1A)は、
全人口を分母にしてもかなりリスクが高いのですが、
高齢者に限定すればさらにリスクは大きく上昇します。

交通事故も乗用車とバイクで分ければリスクが異なります。

すなわち、どのようなフレームで評価するかによってリスクは大きく変化します。
そして、フレームの設定はリスクを比較する目的に依存します。
また、一つのリスクを複数のフレームから評価することは、
データの見方やリスク情報の受け止め方(リスクリテラシー)
を養うのにも有効かもしれません。

posted by shimana7 at 00:02| リスク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月27日

SETACヨーロッパ大会に参加しました


5月7-11日にベルギーのブリュッセルで行われた
SETACヨーロッパミーティングに参加してきました。
久しぶりのベルギーで心躍る出張でした。

2年ぶりのSETACヨーロッパですが、
今回も非常に勉強になることが多かったので
忙しい中でも行ってよかったです。



・水草関係
実は今年度から水草を研究対象に加えています。
今回は水草関連の情報収集がメインタスクでした。

Glyceriaというイネ科の水草の試験ガイドラインが開発中ということですが、
リングテストのばらつきが大きく、問題があるようです。

また、水草でSSD解析を行うために、多種の水草で試験を行うような系が構築されており、
マツモやハゴロモモ、スギナモなどが利用できそうでした。


・陸上植物
水草に加えて以外にも陸上植物の話題が非常に目立っていました。
OECD208を用いた毒性試験やメソコスムを用いた高次評価法の提案など、
バラエティに富んだものでした。
これまで全くノーマークだったので大変勉強になりました。


・金属関係
Bio-metというBiotic ligand model (BLM)の簡易ツールが更新されて
ver4.0になったらしいです。
新たに鉛の計算ができるようになりました。
http://bio-met.net/

鉛のBLMは完成段階で、full BLM補正とbio-met、PNEC-pro、DOC補正が比較され、
bio-metとPNEC-proの二つの簡易ツールは
そこそこ使える(Full BLMとほぼ同じ結果になる)ようです。

業界団体が中心となって
Metals in the environment
http://metalsintheenvironment.com/
というサイトが出来上がりました。
金属の生物利用性や複合毒性、モデルなど、様々な情報が掲載されているようです。
特にインフォグラフィック的なアニメーションの出来が良く、おススメです。


・殺菌剤の生態影響
殺菌剤は当然ながら水生菌類に高い毒性を持つはずですが、
このあたりの知見は驚くほど少ないです。
重要性は多くの人が認識していますが、
やはり評価が難しいというのが研究が停滞している理由かと思います。
そこで、個別の水生菌類種への影響よりも、
有機物分解や栄養塩循環など、生態系機能を評価軸としている研究がほとんどです。
今回の学会でも葉っぱの分解速度をエンドポイントにするなどの研究が多かったです。

ちなみに私のポスター発表は、
水生菌類の個別種を用いた毒性試験法の検討についてだったのです。
しかし、最終日でポスターセッションの時間がほとんどなく、
まだセッションの時間が終わってないのに、会場がどんどん片付けられていき、
あまり議論にならなかったのが残念なところです。


・SSD関連
STOWAというところからSSDを用いた
生態リスク計算ツールが出ているようです(オランダ語のみ、まだ試してない)。
http://www.stowa.nl/publicaties/publicaties/Ecologische_Sleutelfactor_Toxiciteit__Hoofdrapport__deelrapporten_en_rekentools_

ssdと複合影響モデルを組み合わせると、
累積リスク(複数物質によって影響を受ける種の割合)が計算できます。
これをかなり幅広に解析してみると、
Top1%の物質で99%の影響は説明できるということで、
検出される物質の数はリスクにはあまり関係がないということでした。
さらに、これらの地点で実際の生物調査も行っており、
影響が5%を超えると生物相に影響が出だすというデータが得られています。
5%以下にするための希釈率を計算すると、
これをFootprintとすることができ、一つの指標になるようです。
実際には多様な土地利用が混ざっていたほうが(日本型の土地利用?)
Footprintは少なくなるようでした。


・複合影響
「The sequence makes the poison(毒かどうかは順番が決める)」という
秀逸なタイトルの発表がありました。
パラケルススの「The dose makes the poison」へのオマージュ(?)で、
このセンスはとても好きです。
物質AとBを時間差で曝露させるのですが、
どちらを先に曝露させるかで影響の出方が大きく異なる、
という実験結果が出されていました。
まあ遅効性のものと即効性のものをうまく組み合わせれば、
そういう結果を生み出すことはできるかと思います。


・行動への影響
Viewpointという魚の稚魚の行動を録画して解析するツール:
http://www.viewpoint.fr/en/p/equipment/zebrabox
が面白いと思いました。
ほかにも類似のツールはいくつかありましたが、
ミジンコの遊泳阻害とか、通常の毒性試験も
画像解析とAIで自動でできるようになるような日も近いと感じました。


・曝露評価関係
水中濃度を予測するいわゆる曝露モデルは
もういろいろなものが出そろっていますが、
これを毒性試験を行うマイクロプレート中の被験物質濃度の経時変化を
予測するために適用した事例が面白かったです。
やりかたはごく普通の分解速度や吸着係数などのパラメータを使って計算するものですが、
このアイディアは思いつかなかったなあ、と感心しました。


・ゲント訪問
最後に以前在籍していたゲント大学を訪問しました。
同じ市内ですがラボを引っ越して、以前の古いラボから
とても新しくきれいなラボになっていました。


・感想
一度にこれだけ多くの見知らぬ情報が得られるというのは、
やはりSETACをおいてほかにはないと思います。
ただ、日本人の参加者は年を追うごとに少なくなってきているのが気になります。
このまま日本との差がどんどん開いていってしまうのでしょうかね。。。

IMG_5051.JPG
写真は会場の入り口です。
入り口では手荷物検査をされ、
金属探知機によるチェックや服のポケットなどをチェックされたりしました。
テロが警戒されている区域なので、まあしょうがないでしょうが、
学会でのこのような経験はショッキングでした。

あと、今回の大会はアートとの融合がサブテーマとなっており、
美術系大学と連携し、
会場の様々な箇所にサイエンスや水生生物などをテーマとした
現代アート作品が展示されていました。
これもなかなか新鮮な経験でした。

posted by shimana7 at 23:12| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月02日

募集

4月以降一緒に働いて頂ける方を募集しています。
農業環境変動センター 契約職員(補助員(研究助手))の募集について:
http://www.naro.affrc.go.jp/acquisition/2017/02/074024.html

主に農薬分析の仕事になります。
私のところに連絡頂いても質問には答えられます。

よろしくお願いします。
posted by shimana7 at 22:23| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月03日

委員の仕事


この時期は年度末ということもあり、行政の検討会が非常に多いです。
先週は3回ありました。そして今日もこれから検討会です。

今日の検討会は環境省が設置する
「水産動植物登録保留基準設定検討会(以下、水産検討会)」
というもので、
水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準
http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun.html
という農薬の生態リスクに関する基準値を決めるための検討会です。
私は平成27年度から委員になっています。

この基準値を決めるプロセスはおおむね以下の順序です。

行政で基準値案の作成

水産動植物登録保留基準設定検討会(非公開)
http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun_kentou/index.html

中央環境審議会 土壌農薬部会 農薬小委員会(公開)
http://www.env.go.jp/council/10dojo/yoshi10-04.html

環境省からパブリックコメント

基準値決定(環境省告示)

水産検討会は非公開で議事要旨のみが公開されます。
非公開なので、かなりすったもんだの率直な議論が交わされます。

提出される毒性データ等が非常にクリアな場合は
スムーズに承認されますが、
古いデータで現在のガイドラインと試験法が異なる、
詳細が不明な点がある、
等データに問題がある場合には時間がかかります。

水に溶けにくく設定濃度と実測濃度に開きがある場合や
分解が早く、代謝物の毒性を考慮するかどうかなど、
データの解釈が難しいものもあります。

追加の解析を求めるなどで、一旦却下される場合もあります。

ここできちんと理論を固めておかないと、
次のプロセスである農薬小委員会でまた引っかかってしまうため、
水産検討会でなるべく揉んでおくことが重要です。

こういう委員の仕事は研究業績にはなりませんし、
(むしろ研究の時間を割かれる)
なかなか表に出にくい裏方の仕事なのですが、
行政の研究者としては行政の役に立ってなんぼだと思います。

今後もたまにはこういう仕事も紹介してみたいと思います。
posted by shimana7 at 10:39| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月31日

曝露関連論文2016


2016年も終わりになりました。
嬉しいことに今年は曝露関連の論文が結構多く出ました。
ここで一気に紹介したいと思います。

1.Yabuki Y, Nagai T, Inao K, Ono J, Aiko N, Ohtsuka N, Tanaka H, Tanimori S (2016)
Temperature dependence on the pesticide sampling rate of polar organic chemical integrative samplers (POCIS)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 80(10), 2069-2075
http://dx.doi.org/10.1080/09168451.2016.1191329

前回の記事(SETAC北米大会)
http://shimana7.seesaa.net/article/444264667.html
でもちょこっと紹介しましたが、
水中に農薬を吸着するサンプラー(パッシブサンプラー)を
一定期間沈めておいて、それを回収して分析する手法の報告です。

吸着速度は温度による影響が大きいので、
その温度による影響を調べて、
吸着量から農薬濃度を計算する際の温度の補正式を出しました。

農薬濃度は経時変化が激しいため、高頻度のサンプリングが必要となりますが、
パッシブサンプラーなら、沈めて置いた期間の平均濃度を
容易に知ることができます。

ただし、パッシブサンプリングは単なる簡易モニタリング手法ではありません。
パッシブサンプラーは基本的に
水中の生物が化学物質を取り込む様式を模倣したものなので、
むしろこちらで得られた結果こそが、
生物への曝露量を正確に表しているものと考えられます。

これまで私がやってきたのは
農薬のピーク濃度を曝露量とした用いた生態リスク評価ですが、
今後はこのようなパッシブサンプリングで測定できる
累積曝露量を用いた生態リスク評価に
取り組んでみたいと考えています。



2.谷地俊二、永井孝志、稲生圭哉 (2016)
水田使用農薬の県別用途別使用量の簡便な推定方法の開発
日本農薬学会誌, 41(1), 1-10

解説は以前に書きました:
http://shimana7.seesaa.net/article/436874563.html

現在はJ-Stageで公開されています!:
http://doi.org/10.1584/jpestics.W15-31

この論文が河川水中の農薬濃度の全国分布を予測する下記の4番の論文に続きます。



3.岩崎亘典、稲生圭哉、永井孝志 (2016)
河川上流側の水稲作付面積率の算定手法の開発−国土数値情報と農林水産統計情報に基づく解析−
GIS -理論と応用-, 24(1), 31-38

この論文も下記の4番の論文に続きます。
河川水中農薬濃度の予測には、
農薬の使用に関するデータと水稲作付面積や河川流量などの
環境要因のデータが必要となります。
この論文はそのうちの流域別水稲作付面積の推定手法に関する報告です。

国土数値情報には水田や畑地など土地利用に関するデータと、
流域界に関するデータがありますので、
それらのデータを用いると流域別の水田面積を推定できます。

ただし、実際に農薬が使用されるのは水田ではなく、
水稲が作付けされた土地になります。
土地利用区分における「水田」とは、
畦畔も含んでいたり、
麦など別の作物が作付けされている場合もあります。
水田面積から水稲作付面積に変換するために
別途農林水産統計のデータを用いています。

さらに、現在は河川の任意の地点を地図上で選択すると、
そこから上流の流域における水田面積を
自動で計算してくれるツールを開発しているところです。



4.谷地俊二、永井孝志、稲生圭哉 (2017)
全国350の流量観測地点を対象とした水田使用農薬の河川水中予測濃度の地域特異性の解析
日本農薬学会誌, in press

タイトルのとおり、全国350の流量観測地点を対象として、
水田使用農薬の河川水中予測濃度の地域特異性を解析したものです。
2番と3番の論文の情報と、流量観測地点の河川流量データから、
農薬の水中ピーク濃度を予測できます。
実測値による検証は最低限行っていますが、
まだ今後も積み重ねていく必要があります。



また、この曝露濃度のデータと各農薬の生態毒性データから、
生態リスクの全国分布を評価することができます。
ここまでくるには何段階もの研究の積み重ねが必要で、
一つずつ論文として出版することでオーソライズしながら
進めていく事が重要でした。

毒性の方も論文の積み重ねが順調に進んでいますので、
2017年はひとまずのリスク評価までの仕上げの年になりそうです。
posted by shimana7 at 23:07| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月23日

SETAC 北米大会に参加しました



The 7th SETAC World Congress/37th SETAC North America Annual Meeting
2016年11月6-10日 フロリダ州オーランド
https://orlando.setac.org/
に行ってきました。実は北米大会は初参加です。


・金属関係
Metal Mixtureの関連は発表の数も大変多く盛り上がっていた感じでした。
ほとんどのものが、金属のMixtureはCAモデルと比較すると拮抗作用、
もしくはIAモデルが合う、という内容のものでした。
つまりは、各金属の作用機作は異なっていて、
同じLigandに結合して毒性を発現するというモデルは通用しなさそう、
ということが示唆されていました。


・パッシブサンプリング
今回とても収穫の多いセッションでした。
農薬のモニタリングのためのパッシブサンプラーである
POCISは大人気のようでした。

我々もPOCISを大プッシュしていますよ:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27305429

ところが、さらに新登場したのがo-DGT(organic DGT)です。
その名の通り、金属のモニタリング用に開発されたDGTの有機物版です。
ほやほやの論文:
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.analchem.6b02749
これは将来楽しみですね。

ちなみに、オリジナルのDGTについてはコチラ(拙著):
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/68/3/68_3_391/_article/-char/ja/


・メソコスム、野外生態系観測
USGSのグループが質・量ともにぶっちぎりな感じでした。

1年間の間に100地点で12回のサンプリングを行い、
農薬は2種類のパッシブサンプラーを用いて300種類測っていて、
生物相も魚類、底生動物、藻類を調べていて、
さらに、野外で採取した生物群集を用いて、
メソコスム実験をするとか、
聞いていて気を失いそうになりました。。。

WEBサイトは以下:
The Midwest Regional Stream Quality Assessment (MSQA)
https://txpub.usgs.gov/RSQA/MSQA.aspx
データもダウンロードできるようです。


・農薬の生態リスク
ネオニコ関係はいくつか面白いものもありましたが、
ハチの野外試験などがメインで、
あまり私の興味の対象ではパッとしたものがありませんでした。


・Major ion
米国の電気伝導度の基準値は室内試験では無く
野外生態系観測の結果から決まっているそうで、
こういうアプローチの成功事例になるだろうと思いました。

USEPA: A Field-Based Aquatic Life Benchmark for Conductivity in Central Appalachian Streams (Final Report)
https://cfpub.epa.gov/ncea/risk/recordisplay.cfm?deid=233809&CFID=80271835&CFTOKEN=20606729

Aquatic Life Benchmarkとあるので、
まだ国の基準値として採用はされていないのだろうと思います。
それにしても面白いデータです。
野外生物調査の結果からSSDを構築してfield-based HC5を計算しています。
当然ながら海水と淡水では生物相が全く違うので、
そもそも電気伝導度というのは
生物相の差が出やすいんだろうな、とは思うのですが。


・水質基準ガイドラインの改訂
こちらは国の基準値設定の大元となるガイドラインの改定に関する話。
現在のガイドラインは1985年に作られて、
30年以上改訂されていないのです。

USEPA: Guidelines for Deriving Numerical National Water Quality Criteria for the Protection of Aquatic Organisms and Their Uses
https://www.epa.gov/wqc/guidelines-deriving-numerical-national-water-quality-criteria-protection-aquatic-organisms-and

現在この改訂作業が進んでおり、
スコープ文書なるものが2017年、
最終的な新ガイドラインの発効は2021年を予定しているのだそうです。


・自分の発表
私は二件のポスター発表:金属関係1つと農薬関係1つを行いました。
興味を持ってくれたのはほとんど産業界の人でした。
論文の別刷りは全部はけましたが、
ヨーロッパ大会ではいつも足りなくなっていたポスターのA4コピーは全然はけず、
興味の対象も違うのかもしれません。


・全体
会場はだだっ広いホテルでリゾートな雰囲気はあるものの、
周りになーんにも無く、
外にランチを食べに行くこともできない不便すぎなところでした。
せめて町中でやって欲しいところです。

IMG_3488.JPG

会場で売られているまっずいサンドイッチ(8$!)は衝撃的でした。

IMG_3485.JPG

オーランドはディズニーやUSJもあり、
ちょっと足を伸ばせばケネディ宇宙センターなどもあり、
見所いっぱいな場所だそうですが、
そんな雰囲気を感じることも無く帰路につきました。。。


posted by shimana7 at 23:08| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月27日

今年残りの活動予定


今年もあとわずか二ヶ月になってしまいました。
今年中の活動予定はこんな感じです。

1.The 7th SETAC World Congress/37th SETAC North America Annual Meeting
2016年11月6-10日 フロリダ州オーランド
https://orlando.setac.org/

二件のポスター発表をします。
金属関係1つと農薬関係1つです:
「Effect of pH and hardness on the toxicity of zinc, copper, cadmium, and nickel to the freshwater diatom Navicula pelliculosa」
「Regional distribution of ecological risks of pesticides in Japan - Integrated analysis of environmental model and species sensitivity distribution」



2.2016年度 第29回日本リスク研究学会年次大会
リスク概念の理解と普及に向けて
会期:平成28年11月25〜27日
会場:大分市 ホルトホール大分
http://www.sra-japan.jp/SRAJ2016HP/indexjp.htm

企画セッションとタスクグループ活動報告で発表します。
企画セッションは昨年度好評だった身近なリスクシリーズです。
私はリスク比較にがっつりと取り組みます。
なんだか311以降、リスク比較そのものが
タブー視されてきたように思うのですが、
決してそんなことは無い、リスクは定量化して比較してなんぼ、
だと思っています。

企画セッション「身近で見過ごされてきたリスク2」
http://www.sra-japan.jp/SRAJ2016HP/kikaku_session-3.htm

企画責任者:村上道夫(福島県立医科大学)
平井祐介(経済産業省資源エネルギー庁)

社会でも、また本学会においても、これまであまり着目されてこなかった「身近で見過ごされてきたリスク」について、昨年度年会に続く第二弾として、3分野 3名の研究者の方から、発表頂く。また、新たな試みとして、セッションの前に学会参加者に自身が思う「身近で見過ごされてきたリスク」を1つ挙げてもら い、紙に記載していただいたものを申請者が回収し、コメンテーターがその中からピックアップしたリスクについても考える、発表+参加型のセッションとする。

発表者
1:永井孝志 (国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)
  リスクのモノサシで測る身近なリスクランキング

2:竹林由武  (福島県立医科大学医学部/統計数理研究所リスク解析戦略研究センター)
  自殺の総合的対策に向けたリスクアセスメント

3:西一総 (横浜国立大学大学院環境情報学府博士課程)
  近年における美容・化粧品リスク顕在化の実態と消費者認知の動向

コメンテーター 岸本 充生(東京大学公共政策大学院)



3.国立環境研究所 第10回生態影響試験実習セミナー
http://www.nies.go.jp/risk_health/referencelab_seminar_10.html
第10回目となる今回は、ニセネコゼミジンコを用いた繁殖試験とセスジユスリカを用いた遊泳阻害試験を対象に平成28年12月14日(水)〜16日(金) の3日間の日程で開催します。

私は2日目の「農薬のリスク評価の最新動向」の講義を担当する予定です。



そんなことで、またどこかでお目にかかりましょう。
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2016年09月11日

環境毒性学会@愛媛

ということで、先週は第22回日本環境毒性学会研究発表会(愛媛大学)
に行ってきました。

この学会でも種の感受性分布を使用した研究が増えてきたなあ、
という印象です。
マニュアルを出した影響があるかもしれませんが、
良い傾向になってきたなという印象です。

私は2日間で口頭発表を3題行いました:
「珪藻Navicula pelliculosaへの金属毒性に対する硬度とpHの影響」
「室内毒性試験、種の感受性分布、メソコスムを活用した生態影響評価結果の相互比較」
「環境毒性学とレギュラトリーサイエンス 〜農薬の生態リスク評価の事例から〜」

いろいろ発表を頼まれているうちに増えてしまい、
3題口頭発表という初の経験となりました。

SSDを使うからには結果の数字の意味まできちんと考えてやってね、
といことで、特に二題目の発表
「室内毒性試験、種の感受性分布、メソコスムを活用した生態影響評価結果の相互比較」
はそのようなことを意識して発表したつもりです。
HC5を超えたからリスクが高いとか言っていた発表もあったかと思いますが、
もうすこし数字の解釈は丁寧にやって欲しいものです。

シンポジウムでは
レギュラトリーサイエンスをテーマにした発表も行いました。
日本リスク研究学会の活動の方でこの手の事例は豊富に持っているので、
ネタを絞るのに苦労しました。
最初に一生懸命作ったネタとスライドは、
後で見返すとあまりに明後日の方向を向いていたので、
ほとんどボツにして大分無難な内容に抑えました。

「レギュラトリーサイエンス」という用語が非常に微妙なものであることは
このシンポジウムのなかでもいろいろと意見が出て、
おおむね賛同できるものではありますが、
そういう概念があることはやはり知っておいて損は無いと思います。

posted by shimana7 at 22:52| 研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする